司法書士の合格後のキャリア
司法書士に合格した後、どういうキャリアがあるのかな?
司法書士試験合格後、司法書士事務所に勤めて修行し、その後独立開業するのが一般的です。
近年は司法書士のキャリアも多様化しており、
- 合格後に即独立開業
- 企業内司法書士として勤める
- 司法書士法人の設立
- 合同事務所の設立
など、さまざまです。
この記事では、これから司法書士試験を受験をする方や勉強中の方向けに、合格後のキャリア形成について詳しく解説します。
司法書士試験に合格したら...と将来のことをイメージし、学習のモチベーションにしてみてください。
司法書士の常識
まず最初に、司法書士の文化です。①合格後一定期間修行すること、②転職は当たり前、という常識を紹介します
① 就職して実務経験を積む
司法書士試験に合格して、ひと通りの研修が終了した後は司法書士事務所に就職するのが一般的です。(特に、都市部の方)
勤務して半年から1年程度で、決済や抵当権抹消、相続登記など基本的な登記申請の流れは身につきます。そして、2年くらい司法書士事務所に勤めれば、司法書士として一人で業務をこなしていく実務スキルは身につくと考えて問題ありません。
司法書士事務所に就職できるのか?
実務未経験でも受け入れる事務所は多いです。
もちろん、補助者としての経験があれば即戦力として採用されやすい面がありますが、実務経験がなくても受け入れている司法書士事務所は多いのです。
司法書士資格があれば、都市部では就職先がないということはまずないのでこの点の心配は不要です。(人材紹介会社も司法書士の就職支援にとても熱心ですよ)
下積み時代の給料
まったくの業務未経験の場合には月収20万円前後からスタートします。
難易度の高い司法書士試験に合格したのに、収入が少なすぎると感じるかもしれませんが、勉強させてもらう立場なので修業期間中は我慢しましょう。
参考 司法書士の年収
なお、司法書士試験合格後に研修を受けますが、ほとんどの合格者が簡裁代理を得るための特別研修修了まで受講するため、合格後、翌年の3月上旬までは研修期間として過ごします。この認定(簡裁代理権)を得ると3万円~5万円程度給与が高くなる事務所が多いです。
司法書士事務所を選びの注意点
給料よりも、何を学べるかを大切にした方がよいです。
就職する場合、給与額を気にしてしまいがちですが、ずっと働き続けるわけではありません。つまり、短期的な収入よりも、今後のキャリアを想定して必要な実務経験を積める事務所を選ぶのがポイントです。
司法書士事務所の業務内容は、相続や不動産決済、債務整理や信託など特定の業務に特化している事務所も少なくありません。
幅広く業務を学び、将来的に独立を考える場合にはたいのであれば、登記を中心としつつも、他の業務も行っている事務所に入った方が、先々のことを考えた場合には有益なのです。
② 司法書士は転職が「あたりまえ」の文化
司法書士業界では転職は相当一般的なことです。一般企業と比べて、出入りの激しい業界なのです。
「この事務所は合わない」と感じたため、1ヶ月程度でやめたという話も珍しくありません。何度も入所、退所を繰り返していたら人間性に問題あり...と煙たがられるかもしれませんが、数回の転職であれば何も問題はありません。
特に東京や大阪などの都心部では、一時期、合格者が多かった時期があったことから司法書士事務所において有資格者の数が追いついていません。司法書士事務所としても有資格者は必要なので都会では転職もかなりしやすい状況なのです。
転職するときのポイント
例えば債務整理に特化した事務所で1年間過ごし後は、様々な業務を総合的に行っている事務所に対して転職し、実務経験の幅を広げると良いでしょう。司法書士の実務経験の幅が広がると、将来独立したときに幅広い業務に対応できるためです。
自身の培った経験を欲していそうな事務所に対して、前の事務所で培った実務スキルをアピールすれば、容易に転職はできます。
司法書士の代表的なキャリア4つ
ここからが本題です。司法書士の代表的なキャリアを4つ分けて解説します。
① 個人事務所を設立する
司法書士の王道ですね
司法書士は、弁護士と異なり、日本中ほとんどすべての地域に1人以上存在しており、身近な法律問題や手続きの相談に乗るという市民の法律家という姿が伝統的なあり方です。
弁護士のように「法律家」という一歩敷居が高いというイメージではなく、「街の法律屋さん」といった具合で市民に近い存在として活躍するのです。
この点、行政書士に近いかもしれません。行政書士に比べ、司法書士は対応できる業務が広いため、とても有利です。
今後は超高齢化社会へと突入し、後見や相続といった個人の「終活」場面でで活躍することが司法書士の権限と職責として可能となります。
そして、個人の「終活」と向き合える司法書士として、街に1軒はある伝統的な司法書士像のかもしれません。
司法書士はAIにとって代わる資格などネガティブなことを言われていますが、伝統的な司法書士像はひとつの「王道」といった形で価値があるのではないかとも思います。
② 地方では合格後に即独立もあり
地域によっては、すぐ独立しても十分稼げます
合格後は、司法書士事務所で経験を積んで、独立開業するのが一般的と紹介しましたが、地方都市では状況が異なります。
地方の場合には司法書士事務所自体が少ないため、地域によっては、即独(すぐに資格を登録して独立開業すること)することとなるケースもあります。
一切業務がわからない状況での開業は不安ではないかと思われるかもしれませんが、どの司法書士会でも、(無給となりますが)事務所で1ヶ月半~2ヶ月程度働いて実務を学ぶ配属研修が用意されています。
また、開業にあたっては(もちろんお金があればいきなりテナントを借りることも可能ではあるものの)自宅の一室でも構わないため、ほとんど開業資金はかかりません。
そして、地方の場合、司法書士が少ないため、相続や後見などの業務は、明らかに需要>供給という形になっているため、比較的早く軌道に乗る司法書士が多いのです。
また、地方では司法書士の世代交代という問題も生じていますので、修業期間を設けずに、合格したらすぐに独立開業するというのも一つの手段なのです。
③ 司法書士法人や合同事務所を設立する
規模を拡大していくことも可能です
司法書士の資格を利用して、大規模に経営をしていくという方もいます。
具体的な方法として、司法書士同士で「司法書士の会社」である司法書士法人を立ち上げるという方法や、税理士など他士業と一緒に合同事務所を作るという方法です。
司法書士法人では、大手の不動産会社や銀行とネットワークを構築すれば、決済業務などを一手に引き受け、多数の使用人司法書士を雇入れ、いわば「大企業」となる事務所もあるようです。
税理士との合同事務所は、税理士などと合同で業務を行うことで、ワンストップサービスの提供を売りにしている事務所が多い具合です。税理士と合同事務所とすれば、相続税が絡んでくる相続手続きもワンストップで行うことができますからね。
司法書士業務は法律で独占業務とされていますから、経営センスがあれば、いわゆるブルーオーシャン戦略で大規模な法人や合同事務所の経営者となることも可能なのです。
④ 企業内司法書士として勤める
独立だけがすべてじゃない
司法書士の資格を活かす別の方法として、司法書士の資格を持って一般企業へ入社するという企業内司法書士というキャリアもあります。
中堅から大企業に就職し、契約業務や事業の新規立ち上げの際の会社法上の手続き、M&Aの手続きなどに関与したり、不動産会社で登記業務を行うなどといった働き方です。
会社組織の場合は給与が保障される安定感がありますし、特に会社法務に興味がある方にとっては仕事も非常に楽しいものとなるようです。
一般に司法書士となる人は独立志向が強い傾向がありますが、資格の活かし方はそれぞれですので、会社内でバリバリと働かれるという資格の活かし方も当然可能です。
合格後のキャリア・まとめ
伝統的な街の法律屋さんとしての司法書士像という生き方もまだまだ可能であり、他方では、勤務司法書士や法人設立といった新しい司法書士の生き方も可能です。
司法書士には向いている人とそうでない人もいますし、司法書士の難易度は極めて高いのですが、合格さえすれば、可能性は無限大に広がります。
個々人のライフスタイルに合わせてさまざまな使い方ができ、しかも、直接に人の役に立つことができる「司法書士」という資格取得を目指してどうぞがんばりしょう!