司法書士で午前択一で足切りされる原因と対策
午前択一式の基準点を取れずに、足切りになった...どうしたらいいのだろう?
司法書士試験の午前科目は、毎年、7割強から8割程度が基準点(足切り点)ラインとなっています。
午前科目は一見すると非常に取り組みやすいものの、基準点を突破することは意外と難しく、毎年多くの受験生が足切りにあっています。
本記事では残念ながら午前科目で不合格となってしまった方に向けて、午前科目の傾向の再確認と学習方法を解説します。
司法書士試験・午前科目とその対策
午前の択一式の試験科目
司法書士試験の午前科目は、憲法、民法、刑法、商法という学習に入りやすい4科目です。
法学部生には馴染みのある科目ですし、書籍も豊富、午後科目に比べ学習に入りやすいことから、予備校の講義などでも午前科目の民法から始まります。
試験科目 | 出題数 | 配点 |
---|---|---|
憲法 | 3問 | 9点 |
民法 | 20問 | 60点 |
刑法 | 3問 | 9点 |
商法 | 9問 | 27点 |
参考 司法書士の試験概要
午前科目の合格基準点・突破者数は午後科目より少ない
法務省で公表されている司法書士試験の合格基準突破人数を比較すると以下のようになります。
基準点 | 午前択一突破数 | (基準点) | 午後択一突破者 | (基準点) |
---|---|---|---|---|
H28年 | 3,114名 | 25問 | 3,960名 | 24問 |
H29年 | 3,069名 | 25問 | 3,139名 | 24問 |
H30年 | 2,897名 | 26問 | 3,461名 | 24問 |
出典:法務省-司法書士試験
例年、午前科目の基準点(足切り点)突破者の人数は午後科目の突破者よりも少なくなっているのです。最近では、平成28年、30年で午前と午後の突破者の差が極めて大きくなっています。
いずれにしても、毎年、午前科目の基準点突破者は午後科目の基準点突破者よりも少ないのが通例となっています。
午前科目は8割以上の得点が必要
午前科目は法律系の他資格を受験された方から見ると、科目によってはとても易しく見える科目や分野もあります。
例えば、憲法は行政書士試験より易しく、民法の債権分野や刑法は司法試験・司法試験予備試験などより易しい問題が出題されます。
ここで大切なのは問題の難易度ではありません。問題が易しい分、高得点を取らなければ基準点突破(ひいては最終合格)ができないということです。
午前科目は8割・28問以上正答しましょう
午前科目は、これから新規で法律の学習を始められる方も、他資格等で学習経験がある方も、気持ちとしては、高得点を取らなければ足切りになってしまうという意識で学習に望まれてください。
具体的には、合格者は「8割以上得点しているのが当たり前」というのが午前科目の実態です。
確かに7割強の点数(25問程度)で基準点を突破できる年もありますが、この程度の点数では、よほど午後で取らなければ、いわゆる総合落ちとなってしまいます。午前科目は8割(28問)程度が合格のためには必要な目安です。
総合落ちとは...午前・午後・記述すべてで基準点を突破しつつも、合格点に足りないケースです。
午前科目で不合格だった後の勉強方法
それでは具体的に、午前科目で足切りに合う人の特徴と対処方法について詳しく解説します。
- 基準点に5点以上不足
- 基準点に1~4点不足
これら2つに分けて順番に解説します。
① 午前科目で基準点に5点以上不足して不合格だった場合の対処法
基準点より5点以上低い場合には、まだ午前科目全体の学習が十分に済んでいないという方が多いと思われます。
よくある要因は
- 予備校の基礎講座を受講している途中
- 過去問集をまだ十分に解いていない
- 午前のかなめである民法や会社法の理解と知識習得がまだ不十分
です。
午前科目は近年では、毎年、未出の分野からの出題があり、過去問学習だけでは万全に対応できない面もあります。
しかし、一方で、毎年6割から7割弱程度は過去問の焼き直しの出題でもあるため、基本的な理解を前提に、過去問と条文の知識習得で、少なくとも6割程度は点数を取ることができます。
基準点より5点程度不足がある場合には、過去問を中心とした基本的知識がまだ十分ではない可能性が高いと言えます。
テキストや予備校の基礎講座などを利用し、過去問を中心とした知識をしっかりと記憶していくということを進められると良いと言えます。
もし独学で受験して午前科目で5点以上不足して足切りにあった場合は、予備校の利用を強く推奨します。兎にも角にもまず基礎を固める必要があるからです。
高額な受講料がネックで予備校を利用していない方は、資格スクエアやスタディング等の安い通信講座もありますのであわせて検討しましょう。基礎を学べるだけでもその後の学習の進み具合が大きく変わります。
② 午前科目で基準点に1~4点不足して不合格だった場合の対処法
あと一歩届かなかった方へのアドバイスです。
基準点に「あと一歩届かない」という方は、大きく2つのパターンがあります。
マイナー科目を勉強不足としてしまう(憲法・刑法・商法(第35問))
午前科目で数点不足されるパターンとして、午前のマイナー科目と言われている憲法・刑法・商法総則、商行為法(第35問)の学習が十分ではないまま本試験に臨まれるというケースがあります。
確かに、憲法・刑法・第35問は、出題数が少ない割に学習範囲は広く、学習効率が悪いので、やや手薄になってしまいがちです。しかし、上で書きましたように午前科目では、毎年、未出問題が数問出題されます。
過去問でも、テキストでもあまり触れられていない問題であり、合格者でもほとんどが落としてしまう問題が数問織り交ぜられています。
そのため、午前マイナー科目を手薄にすることで、未出問題に加えてマイナー科目も落としてしまうことで基準点に少し足りなくなるというパターンが考えられます。
こういった方の場合は、
- 憲法刑法は年内に一度はしっかり学習する
- 商法の場合は直前期の4月、5月頃にまとめて学習する
のがおすすめです。
憲法と刑法は3問出題され、理解が難しい面もあるので、年内に一度は学習をされ、直前期に過去問を中心に記憶喚起をすることで対応ができます。
一方で商法は、1問しか出題されない上に、条文知識が中心であり、過去問の焼き直しの出題が中心ですので直前期の暗記で対応できます。
いずれにしても、マイナー科目で失点されてしまわれた場合には、あえてマイナー科目に時間を取るということが来年のリベンジには効果的です。もちろん、予備校の単科講座などを利用すればより効率的に学習をすることができます。
パターン2知識が混同してしまっている
これは、午後科目でも共通なのですが、司法書士試験は覚える法律知識の分量が膨大であるため、似ている知識が混同してしまい、失点を重ねてしまうというケースがあります。
例えば、代理権の制度について、民法では、依頼した本人が死亡すると、代理人の代理権は消滅します。(民法第111条第1項)
しかし、(午後科目ですが)不動産登記法では、登記を依頼した本人が死亡しても代理人の代理権は消滅しません。(不動産登記法第17条第1項)
これは一例ですが、民法や会社法では非常に知識が混同しやすい制度がたくさんあります。
そして、司法書士試験ではこのような知識が混同しやすいところを意識的に狙って出題してくる節があります。
「昨年は午前で基準点を超えたのに今年は基準点に1点たりなかった・・」ということは司法書士試験では珍しくありません。
このように、試験会場で知識の混同が生じて間違い、失点が重なってしまうということが少なくありません。
対策としては、予備校が作成している知識の整理・図表などを活用して正確に記憶していくということが効果的です。
予備校の教材は混同しやすい知識について、図表を使ってまとめている教材や書籍が数多くあります。以下の書籍が、特におすすめです。
>うかる!司法書士 必出3300選は、知識が図表でまとまっており、同時に、基本的な知識、間違いやすい知識を問題で整理してくれています。多くの受験生に好評な良書としておすすめです。
午前択一の足切り対策・総合
午前科目は、近年は難しい学説問題などは出題されなくなりました。その代わりに条文と判例の知識を極めてシビアに記憶しているかを問う問題が出題されてきています。
条文と判例と過去問をベースに「午前は失点しないのが当たり前」という意識で学習に望みましょう。
合格基準点は例年25問前後ですが、総合落ちを回避し合格するために、28問(8割)を必ず正答しましょう。