商業登記法の勉強法とコツ
商業登記法は、どうやって勉強したらよいのだろう?
司法書士試験では「商業登記法」から多くの問題が出題されます。司法書士は登記のプロですからね。
この記事では、入門者・初級者向けに商業登記法の位置づけや勉強のコツについて、詳しく解説します。
司法書士試験の商業登記法とは?
商業登記法の択一は午後択一の最後に配置されていて、次に記述問題が2問用意されています。時間も精神的にも追い詰められた状況で解かなければならない科目なのです。
午後の試験科目 | 出題数 | 配点 |
---|---|---|
民事訴訟法 | 5問 | 15点 |
民事執行法 | 1問 | 3点 |
民事保全法 | 1問 | 3点 |
司法書士法 | 1問 | 3点 |
供託法 | 3問 | 9点 |
不動産登記法 | 16問 | 48点 |
商業登記法 | 8問 | 24点 |
商業登記法の択一は慣れてくると、比較的安定して点数が取りやすい科目となりますが、非常にとっつきにくく理解をして慣れるまで少しコツが必要です。
おそらく司法書士試験科目の中で1位、2位を争う理解のしにくさなので、覚悟して勉強に臨みましょう。
本記事では商業登記法の択一の出題傾向や学習法などをまとめて行きたいと思います。記述式の勉強方法は別途記事で解説していますので、そちらも参考にしてください。
商業登記法の基本
ではまず、商業登記法の基本から解説します
商業登記法は会社法の延長線上にある
会社法の理解が必須となる商業登記法
商業登記法の択一は、午後の部で8問出題されます。
多くの方が択一の最後として解いて、記述の問題へと移るのが商業登記法の択一です。
商業登記法では、商業登記独自の理解・学習が必要となる問題はもちろんあります。
しかし、例年、商業登記法の出題の半分程度は会社法を学習することで解くことが出来る問題となっています。
逆に言えば、会社法の理解が必須となるのが商業登記法です。
会社法の知識で解ける商業登記法の問題の具体例
会社法の知識で解くことが出来る問題を具体的に見ていきましょう。
監査役会が会計監査人を解任した場合にする会計監査人の解任による変更の登記の申請書には,監査役の全員の同意があったことを証する書面を添付しなければならない。○か×か
○会社法340条第2項一部抜粋:「(会計監査人を監査役の同意で解任するときは)解任は、監査役が二人以上ある場合には、監査役の全員の同意によって行わなければならない。」
発起人が作成した定款に成立後の当該株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項についての定めがない場合において、当該株式会社に払込み又は給付をした財産の額の一部を資本金として計上しないときは、申請書には、当該事項について発起人全員の同意があったことを証する書面を添付しなければならない。○か×か
→○会社法第32条:発起人は、株式会社の設立に際して次に掲げる事項(定款に定めがある事項を除く。)を定めようとするときは、その全員の同意を得なければならない。
・・三成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項
これらの2問は、会社法の条文を正確に記憶していることで解くことが出来る問題です。
このように商業登記法の択一の問題は、会社法の知識のみで解くことが出来る問題が多いのが特徴です。
商業登記法特有の出題
商業登記法特有の出題
一方で商業登記法特有の出題がされる問題もあります。
具体的には、
- 印鑑提出制度
- 個人商人の登記
- 本店及び支店の登記
- 特例有限会社の登記
- 外国会社の登記
- 法人登記
- 審査請求
などが商業登記法特有の出題となります。
会社法の知識では解くことが難しい商業登記法特有の出題についても、8問の出題中、3問から4問が出題されるため、ヤマを張ることは難しく、リスクも高くなります。
やはり商業登記法もまんべんなく学習する必要が高いということになります。
司法書士試験に王道はないというのが個人的な感想です。結局のところ、コツコツとまんべんなく学習している方が合格していると感じます
ただ、商業登記特有の出題については、過去問の焼き直しである出題が多いので、過去問を中心に知識を整理しておく程度で十分に対処できます。
確かにまんべんなく学んでおく必要はあるものの、商業登記特有の出題分野は、そこまで深く学ばなくても足りるという面もあります。
法人登記は要注意
ただ、商業登記特有の出題の中でも、法人登記に関してはやや、細かく学習しておく必要があります。
法人登記は、2008年に成立した「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づくものであり、比較的新い制度です。
また、実際にNPO法人の設立などで活用されているため、比較的出題が多い具合です。
一般社団法人、一般財団法人に関する登記手続きは株式会社の登記手続きとの比較の視点でも問われやすいので、やや力を入れて学ばれると出題があった際にアドバンテージになりやすくなります。
商業登記法の学習のコツ
独学はなかなか難しい
商業登記の申請は、会社法で定められている手続きを確実に行ったことを証明するための手続きということができます。
会社法自体が人工的なシステムである上に、商業登記法はこの会社法の知識を前提とした上で、公示のために必要な手続きを技巧的に定めているため、独学で理解されることは全科目中1,2位を争う難しさがあると言えます。
予備校利用のススメと独学の方法
そのため、商業登記法は、(司法書士事務所での実務経験があるなどの場合を除いて)は予備校の授業を活用されることがもっとも手っ取り早い科目です。
自分自身で理解しようとすれば数時間かかってしまうところが、数分の説明で理解できるように説明してくれます。
商業登記法は初めて学ばれる場合には、商業登記法だけでも予備校の基礎講座を活用されることがおすすめです。
高額な受講料がネックで予備校を利用していない方は、資格スクエアやスタディング等の安い通信講座もありますのであわせて検討しましょう。基礎を学べるだけでもその後の学習の進み具合が大きく変わります。
一方で、どうしても、独学ですすめたいという方には、会社法の勉強とコツでもご紹介した山本浩司先生のオートマシリーズがおすすめです。
オートマシリーズで会社法とセットで理解されつつ、過去問を中心とした演習で知識を定着させていかれることが商業登記法の択一の力をつけていくコツです。
その他商業登記法学習のコツ
ひな形集の利用
「不動産登記法の学習のコツ」の記事でも解説していることですが、登記法の択一の選択肢は、申請書に記載することを文字で表現したものです。
そのため、選択肢で「~~~~の登記を申請することができる」などといった選択肢があったら、その都度、ひな形集などで申請書の記載例をチェックされることが記憶の強化につながります。
ひな形集としては、予備校が作っているものでも必要十分ですが、実務でも使用できるものとして、商業登記ハンドブック(松井信憲(著)・商事法務)という本がおすすめの良書です。
参考 商業登記ハンドブック
法務局でも使用されており、商業登記実務では必携の1冊であると同時に、記載内容は司法書士試験でも参考になります。記述対策も含めて大変おすすめできる一冊です。
登記事項は可能な限り覚える
登記事項とは、登記の申請書に書く内容のことです。
この登記事項は、会社法の第911条から第914条に列挙されています。会社法第911条から第914条までは可能な限り覚えておくことが望ましいです。
というのは、何を登記すべきかということを覚えておくだけで解くことが出来る問題が意外と少なくないためです。
特に、学習で手薄になりやすい合名会社、合資会社、合同会社の登記事項は、正確に覚えておけば正答できる出題が極めて多くあります。
登記事項を覚えるのは、申請書を書く段階にならないと単純な暗記作業なので、退屈な感じもするかと思われますが、例えば、毎晩寝る前に覚えることを習慣化されるなどで自然と商業登記法の実力がアップしていきます。
試験現場を意識して焦る状況で解く演習をする。
商業登記法は、午後の択一の最後であり、次に記述も待っていることから、非常に時間的にも精神的にも焦りが生じる状況で解くことになります。
そのため、ある程度の力がついてきたら、年度別の過去問集を利用して(あるいは法務省のHPから過去問をダウンロードするなどして)、10分程度で8問を解く訓練をされることがおすすめです。
いくら知識があっても、試験現場で実力が発揮できないのであればせっかくの勉強が無駄になってしまいます。
普段から試験の現場を意識し、学習することが本番でいかんなく実力を発揮されることにつながります。