商法の勉強法とコツ

司法書士試験対策・商法の勉強法とコツ

商法は、司法書士試験において、民法・不動産登記法に続いて、3番目に重要度が高い科目です。

 

商法は商業登記法(記述もあり)の理解に直結するため、司法書士試験合格のためには必ずマスターすることが必要となります。

 

本記事では商法学習のコツを説明していきたいと思います。

 

 

司法書士試験における商法の出題分析

出題は会社法8問+商法1問

商法の出題の内訳を見ると、毎年、会社法からの出題が8問、商法(商法総則・商行為法)からの出題が1問となっています。

 

圧倒的に会社法からの出題が多い傾向となっていますので、対策としては会社法の学習がメインとなります。

 

ただ、司法書士試験は択一1問差、記述0.5点の差で合格・不合格の明暗が分かれる試験ですので、商法の学習もおざなりにできません。

 

少なくとも、商法も一度はしっかりと学習をされた後、5月以降の直前期に重要条文を見返すといった程度の学習は必要です。

 

商法分野をまったく手付かずにして試験に臨む方も一定数いらっしゃるようですが、確実な合格のためには大変リスキーなので、商法もせめて直前期だけは学習することがおすすめです。

 

 

細かい条文の知識が出題

司法書士試験における会社法・商法の出題はとにかく細かい条文知識を問うということが最大の特徴です。

 

特に会社法の条文問題は極めて細かい点が問われます。

 

大学の法学部や司法試験などでは、会社法の理解をしっかりとしているかという点がメインで問われるのに対して、司法書士試験では条文の知識が中心です。

 

一例として過去問の出題例を見てみます。

 

過去問の出題例1

監査役会設置会社においても、指名委員会等設置会社においても、監査役又は監査委員の各過半数は、それぞれ社外監査役又は社外取締役でなければならない。〇か✕か
(平成20年午前第34問・改題)

 

×監査役会設置会社では、監査役の半数が社外監査役であれば足ります。
過半数までは不要です。(会社法第335条 第3項)

 

 

出題例2:

監査役会設置会社においては、会計監査人が職務上の義務に違反したときは、監査役の過半数の同意をもって行う監査役会の決議により、その会計監査人を解任することができる。〇か✕か。
(平成19年午前31問・改題)

 

×全員の同意がなければなりません。
過半数の同意では不足しています(会社法第340条 第4項)

 

 

出題された条文は、数字なども含めて確実に覚える

司法書士試験の会社法学習する際には、出題された条文は、数字なども含めて確実に覚えていなければ間違ってしまいます。

 

司法書士は最終的には、業務で会社の議事録等の作成アドバイス・原案の作成などを行いますが、この際に法律上の条件に違反していると、登記の申請が法令違反により却下されたり、最悪の場合には責任問題となります。

 

そのため、実務において瑕疵(かし・法律上の間違い、問題点のことです)のない手続きアドバイスなどができるように、会社法では極めて細かい条文の知識まで覚えていることが要求されてきます。

 

商法の得点目安

出題知識が細かい会社法・商法ですが、合格ラインとしては、過去問が出題の中心となる年度は9問中7~8問程度、過去問未出の出題が中心となる年度でも9問中5問~6問程度の取得が必要です。

 

過去問で出題実績がある条文であれば、いかに細かい条文でも合格者は得点します。

 

一方、過去問で出題がない分野の問題は合格者でも間違えますが、それでも、半分を超える点数を取らなければ午前の部で基準点未満(足切り)や総合点で合格に不足する(いわゆる総合落ち)のリスクが高まります。

 

 

商法(主に会社法)の勉強の仕方・コツ

学習の初期

まずは、学習の初期の目標は、会社法を理解をすることにつきます。

 

会社法は、極めて人工的な制度ですので、制度1つを理解するためにも、「どうしてそのような制度を設ける必要があるか」とか「その制度のメリットは」など、制度の目的を意識しないと、全く理解することができません。

 

独学でおすすめできるのは、山本浩司先生のオートマシリーズ・会社法・商法・商業登記法です。

 

 

山本浩司先生は資格専門予備校・TACの司法書士講座の看板講師のお一人であり、司法書士試験を独学可能としたオートマシリーズは受験生に圧倒的な人気があります。

 

独学で会社法を学ばれる場合には、一度はオートマシリーズを手に取ってご覧になることがおすすめです。

 

 

 

 

会社法と商業登記法は同時に学習したほうが効率的

なお、山本先生のオートマシリーズもそうですが、多くの商法(会社法)のテキストでは、商業登記もセットとして組み込まれているものが多くあります。

 

これは、会社法と商業登記法のつながりが極めて強いため、会社法と商業登記法は同時に学習したほうが効率的であるという学習上の配慮によるものです。

 

独学では理解しにくい場合には、やはり予備校を利用されることが効果的です。

 

民法や憲法、刑法などは大学の法学部で学ばれた方は、独学でもある程度対処することができます。

 

 

 

司法書士試験の会社法の出題は、学習の切り口が大学で学ぶ切り口とはかなり違う

 

司法書士試験の会社法の出題は、学習の切り口が大学で学ぶ切り口とはかなり違うため、学習経験がある方でも独学が難しい科目です。

 

大学での会社法研究は、主に大企業の会社を念頭に置いて、会社内でトラブルが生じた場合にどうするかという「訴訟」に重きを置く研究が多くなされています。

 

しかし、司法書士は会社関係訴訟には、基本的にタッチできないため(弁護士さんの職域です)トラブルが生じないよう「予防法務」として学習します。

 

そのため、大学や司法試験など訴訟を念頭に置いた会社法とはかなり異なった視点での学習が必要になります。

 

 

 

中盤から仕上げ段階

過去問を中心として出題された条文を覚える

司法書士試験での会社法の出題のポイントを理解された後は、とにかく、過去問を中心として出題された条文を覚えるということがメインの学習になります。

 

先に述べましたように、予防法務の観点からは、解釈上の争いではなく、現在ある条文を忠実に覚えて、後日法的トラブルが生じないようにすることがもっとも重要です。

 

そのため司法書士試験の会社法は、理解よりも記憶がものをいいます。

 

何度も過去問を解き、その度に出題された条文を読み、コツコツと記憶を強めていくという反復練習が会社法の点数安定化のための王道です。
過去問を条文とともに何度も繰り返しましょう。

 

 

改正法はすぐに出題される傾向が強い

なお、会社法は改正が多い法律です。
比較的近時ですと、平成26年改正(平成27年5月1日施行)があり、平成30年以降も会社設立を容易化するなどの改正が予定されています。

 

そして、司法書士試験では改正法はすぐに出題される傾向が強くありますので、改正法も常に意識する必要もあります。

 

改正法について、司法書士試験と関係のある分野をご自身で意識・発見することは至難の業ですので、予備校が出してくれる情報を頼りにすることが会社法では必須です。

 

 

 

商業登記法との関連も常に意識して学習!!

会社法で学ぶ知識は、かなりの部分が商業登記法と連結していきます。

 

例えば、会社法で取締役の選任方法は、株主総会で議決権を持つ株主の過半数を定足数として、出席株主の過半数の賛成によって成立する(普通決議)と学習します。

 

この知識が商業登記法の記述の問題において出題されることがあります。

 

 

つまり問題文示される会社の株主総会議事録を見ると、取締役選任決議に賛成の議決権数がこの普通決議の要件を満たしておらず、申請できない登記となるということを見抜き、それを「登記すべきでない事項」(却下を免れない事由)として記述するという問題などです。

 

このように会社法の知識は司法書士の基幹業務の1つである商業登記の理解・実務に直結します。

 

そのため、商業登記法との関係を意識して学習することが大切です。

 

会社法は、非常に細かい知識を覚えるため、とても大変ですが、将来の実務に直結すると意識されることで学習のモチベーションにもつながります。