司法書士で午後択一で足切りされる原因と対策
午後択一式の基準点を取れずに、足切りになった...どうしたらいいのだろう?
司法書士試験の午後択一は、努力をより一層重ねられることで確実に基準点を超えることが可能です。
本記事では残念ながら午後択一で基準点を突破できず足切りとなってしまった方に向けて、午後択一の点数アップのコツを解説します。
司法書士試験・午後科目とその対策
午後の択一式の試験科目
司法書士試験の午後科目は、司法書士業務を行う上で、最も大切で関係のある法律科目になります。
試験科目 | 出題数 | 配点 |
---|---|---|
民事訴訟法 | 5問 | 15点 |
民事執行法 | 1問 | 3点 |
民事保全法 | 1問 | 3点 |
司法書士法 | 1問 | 3点 |
供託法 | 3問 | 9点 |
不動産登記法 | 16問 | 48点 |
商業登記法 | 8問 | 24点 |
参考 司法書士の試験概要
午後科目の合格基準点・突破者数は午前科目より多い
法務省で公表されている司法書士試験の合格基準突破人数を比較すると以下のようになります。
基準点 | 午前択一突破数 | (基準点) | 午後択一突破者 | (基準点) |
---|---|---|---|---|
H28年 | 3,114名 | 25問 | 3,960名 | 24問 |
H29年 | 3,069名 | 25問 | 3,139名 | 24問 |
H30年 | 2,897名 | 26問 | 3,461名 | 24問 |
出典:法務省-司法書士試験
データ上、午後択一の基準点は毎年午前よりも1~2問程度低くなっています。この傾向は平成19年まで遡っても同様の傾向です。
また、基準点到達者の人数は午前科目よりも多くなっており、毎年少なくとも3000人以上が基準点に超えています。
午後択一は基準点到達後は安定しやすい
次に、午後択一は午前択一に比べた場合、一度基準点を突破できる実力がつくと、点数が安定しやすいという傾向があります。
近年は問題の長文化などにより、午後択一も難化の一途を辿っていますが、午後科目の択一の内容は(司法書士法と供託法の一部を除き)手続法ですので、条文・判例・先例をそのまま記憶しておけば点数に直結しやすい科目で構成されています。
暗記は大変ですが、暗記してしまえばこっちのものですね。
午前の科目は、例えば、刑法で事実関係を判例と少し変えることでその場で考えなければならない問題が出題されたりしましたが、午後科目では、そういった現場思考の問題は少ないのが特徴です。
中学・高校の勉強のイメージで例えれば、午前科目がその場で考えなければならない国語や数学の要素が強いとすれば、午後科目は、暗記が中心となる理科・社会といったイメージです。
暗記科目である理科や社会は、一度点数が安定すれば、あとは時々知識の確認をして、「知識をメンテナンス」しておけば点数が取りやすいですよね。
午後科目はこれと同じようなタイプの出題ですので、一度、基準点に達する実力がつけば、あとは「知識のメンテナンス」(まとめ資料などをこまめに見返す)ことで実力があまり下がりません。
午後科目で不合格となられてこの記事をご覧頂いている方は、暗記途中で四苦八苦しているかもしれません。でも、午後択一は努力が報われると考えて決して諦めず学習を続けてましょう。
午後択一で不合格だった後の勉強方法
① 不動産登記法・商業登記法
午後択一で基準点をクリアーするためのポイントはなんといっても不動産登記法と商業登記法の学習です。
ご存知のように、不動産登記法は出題が16問、商業登記法は出題が8問ですので、理屈上はこの2科目すべてが正解なら近年の基準点には達することになります。
司法書士は登記のプロ!登記法は徹底的に勉強しましょう。
もちろん、登記法を両方満点取るということは試験としては現実的ではありません。
数問のミスは生じて当然ですが、登記法で得点することが午後の基準点突破の為に重要であることは問題数からも明らかと言えます。
また、不動産登記法と商業登記法は司法書士になったあとの基幹業務となる登記業務に直結するものですから、いくら勉強しても勉強しすぎることはありません(特に不動産登記法)。
午後択一で基準点突破のためには、不動産登記法と商業登記法について、穴が開くほど勉強することが最大の対策となります。
学習方法は、独学での理解に不十分な点があると感じられる場合には、予備校の利用が圧倒的におすすめです。
登記法は、極めて実務色が濃い科目ですから、理論だけではなかなかわかりにくいところがあります。
予備校の講師は、実務的な面も含めて試験に必要な知識を横断的に整理して説明をしてくれます。
司法書士試験の登記法に関する出題知識は予備校で研究し尽くされている感すらありますので、ご自身での理解が難しい場合には、迷わず予備校の利用がおすすめです。
一方で、司法書士事務所で補助者をされている方など、既にある程度不動産登記法・商業登記法を理解している方は、実務の流れはご存知と思います。
過去問やテキストを何度も反復して知識を定着させるということで容易に点数は伸びると思われます。
一定の理解が出来たと感じられる場合には、あえて予備校を利用せずとも独学で登記法=午後択一の基準点突破を目指すことは可能です。
いずれにしても、午後科目の基準点突破のためには、登記法について、テキストや過去問を覚えてしまうほど繰り返すということが最大の対策です。
② 民訴法系科目
午後科目でもう一点、ネックとなるのが合計7問出題される民訴法系の科目です(民事訴訟法・民事執行法・民事保全法)
特に、民事訴訟法は、平成30年ははじめて再審の分野が1問出題されるなど出題レベルが上がっています。
しかし、午後の「基準点突破」ということを念頭に置かれた場合には、民訴法系の科目は過去問レベルにとどめて置かれることが無難です。
民訴法系は本格的に学習をすれば、いくらでも広く、深く学ぶことができます。
簡裁の代理権を認められている司法書士の能力向上という視点からは、民訴法系もしっかりと学ぶ方が望ましいですが、まずは司法書士試験に合格することを優先しましょう。
民訴法系について、過去問以上の問題が出題された場合には、ある程度割り切りましょう。登記法で点数を稼ぐことに注力した方が効率的なのです。
毎年、民訴法系は、過去問を中心に知識をしっかり押さえておけば、7問中、4~5問は取ることができます。
民訴法系はあまり深入りしないという割り切った姿勢が基準点突破のためには効果的です。(簡裁代理や裁判書類作成業務のため試験合格後に民訴法系をしっかりと勉強しましょうね)
③ 民訴法系科目
なお、供託法・司法書士法は、過去問の焼き直しばかりが出題されますので、基本的には直前期の過去問丸暗記で十分です。詳しくは各科目の勉強法の記事をご覧ください。
午後択一の足切り対策・総合
近年、午後科目は、登記法を中心に問題文の選択肢一つ一つが非常に長くなっています。そのため、解答に時間がかかってしまい、記述も含めると、解答時間が十分に取れない(時間不足に陥る)というのが出題の特徴です。
試験後にじっくりと選択肢を読むと、過去問やどの基本テキストにも掲載されている重要な先例や条文知識で解答が導けるものの、記述も同じ時間内に解かなければならないという制約の中ではとても解きにくい出題傾向となっています。
問題文の長文化傾向とその対策
キーとなる選択肢に着眼する練習を徹底しましょう
問題文の長文化への対策としては、平成28年ころからの過去問を入手して(法務省HPから無料でダウンロードができます)について、解答に影響する選択肢を見抜く練習をされることがおすすめです。
午後科目は、ほどんどの問題が組み合わせの問題ですが、5つの選択肢のうち、解答に影響する選択肢は1つか2つです。
例えば、正しいものを選べという問題で「この問題はエの選択肢は基本知識で正しい。逆に、イの選択肢は基本知識から誤りだ。エが選択肢で含まれているのは、イエとエオだから、答えは必然的にイオになるな」というような訓練です。
答えのキーとなる選択肢にを探されるくせをつけられることで午後択一のスピードは圧倒的に早くなります。