不動産登記法の勉強法とコツ
不動産登記法は、どうやって勉強したらよいのだろう?
司法書士試験では「不動産登記法」から多くの問題が出題されます。司法書士は登記のプロですからね。
この記事では、入門者・初級者向けに不動産登記法の位置づけや勉強のコツについて、詳しく解説します。
司法書士試験の不動産登記法とは?
不動産登記法は午後の択一と記述で出題され、なんと48点の配点があります。
司法書士試験では不動産登記法が非常に重要で民法に次いで、第2位の重要度がある科目なのです。
午後の試験科目 | 出題数 | 配点 |
---|---|---|
民事訴訟法 | 5問 | 15点 |
民事執行法 | 1問 | 3点 |
民事保全法 | 1問 | 3点 |
司法書士法 | 1問 | 3点 |
供託法 | 3問 | 9点 |
不動産登記法 | 16問 | 48点 |
商業登記法 | 8問 | 24点 |
1問を争う司法書士試験では、どの科目も重要であることにかわりはありませんが、不動産登記法の攻略を避けては司法書士試験に合格することは不可能と断言できます。
本記事では不動産登記法の択一式の勉強法やコツについて解説します。記述式の勉強方法は別途記事で解説していますので、そちらも参考にしてください。
不動産登記の基本
ではまず、不動産登記の基本から解説します
登記制度の意味
不動産登記法は商業登記法と並んで、国民の利便のために登記所(法務局)が取り扱う公示の制度です。
この制度は、おおむね権利や法律関係を一般に公表することで、取引がスムーズに行くようにするために設けられている公示制度といいます。(公示の意味については民法で学習します)
国民の便利のための制度ですので、不動産登記・商業登記はいずれも(戸籍などと異なり)手数料を支払うことで誰でも閲覧することができます。
具体的には登記事項証明書という書類をもらって閲覧することになります。不動産登記法119条。
登記の閲覧には、理由を提示することも、身分証を提示することも必要ではなく、国籍なども問われません。このように一般国民の利便のために公示されているのが登記制度です。
登記の具体例
法務省に掲載されている「不動産登記のABC」を見ながら、読んでください。
この登記事項証明書(見本)によって、司法書士試験と関係がある部分としては、おおむね以下のような点が読み取れます。
- 「登記太郎」さんが、少なくとも平成23年7月26日以降はずっと所有者となっていること。
- 登記太郎さんは、平成23年7月26日に500万円を「株式会社法務銀行」から借りて、担保を設定したこと。
このような点を読み取ることができます。(なお、家屋の構造の部分などは司法書士の隣接職である土地家屋調査士さんにとって重要となります。)
こうした公示制度の基本理解と最低限度の登記記録の読みとりができることを前提として、司法書士試験対策の不動産登記法の学習へと進む具合となります。
不動産登記法理解のコツ~共同申請の原則
不動産登記法を理解するために「共同申請の原則」について
不動産登記法は、権利者・義務者の共同申請が原則
不動産登記法の理解で重要となるのは、その申請形態です。不動産登記法は、共同申請の原則を採っています。
権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。
不動産登記法の申請は、登記上直接利益を受けるものと、直接不利益を受けるものが共同して申請するのが原則になります。
例えば、AさんがBさんに不動産を売却した場合、Aは不動産の所有権を失うという登記上の不利益を受けます。一方で、Bは不動産の所有権を得るという登記上の利益を受けます。
この場合、AとBは一緒に登記所(法務局)に共同して所有権移転登記を申請しなければなりません。
このように不動産登記の申請は原則として登記上利益を受けるものと不利益を受けるものが共同して申請するという原則を共同申請の原則といいます。
不動産登記申請における共同申請の原則は、一般的な役所での申請手続きと比較するとかなり特別な申請方式です。
例えば、住民票を取るために誰かと一緒に申請しなければならないなどということはありません。役所の申請手続きは、一般的に単独申請なので、不動産登記はこの例外となります。
したがって、不動産登記法の択一式の問題では、「△△という事実があった場合、AとBは共同して申請しなければならない」という記述があった場合には原則として正しいということになります。
例外としての単独申請
一方で、不動産登記申請にも関わらず、単独申請をすることができる登記もあります。
これは司法書士試験受験生としては必須の知識であり、相続による権利の移転の登記・所有権保存登記・仮処分による失効・登記識別情報を提供してする仮登記の抹消などが不動産登記にも関わらず、単独申請の登記として挙げられます。
このような申請方式に関する問題は毎年必ず出題されますし、この点の理解が記述式でも出題されることもあります。
不動産登記の申請は共同申請が原則という点は不動産登記を理解する上で極めて重要なポイントとなります。
不動産登記法択一の出題傾向や学習のコツ
出題数と分野
不動産登記法の択一式試験は、午後16問出題されます。出題分野は不動産登記法のテキスト全般で、出題に偏りはありません。すべてが重要なのです。
つまり、不動産登記法はどの分野が出題されても、対応することができるように勉強をしておく必要があります。
不動産登記法の得点目安
不動産登記法は、16問中14問程度得点しなければなりません。
長年受験をされている方や司法書士事務所での補助者経験のある方などは満点も取得してきますので、高得点を取得することが必要です。
近年の出題傾向
近年の司法書士試験では、問題文が長文化しています。かつては(平成25年頃まで)は、一問一答的な単純に知識で判断できる出題が比較的多い感がありました。
しかし、近年は、不動産登記法の択一の選択肢が長文化しています。以下、2つ選択肢をみると一目瞭然です。
仮登記仮処分命令を得てする所有権の保存の仮登記は申請することができない。
Aを所有権の登記名義人とする甲土地について,Bを抵当権者とする抵当権の設定の登記がされている場合において,Aの債権者であるC及びDが詐害行為取消しによる当該抵当権の設定の登記の抹消を求める訴えを提起し,Cについてその請求を認容する判決が確定したときは,Dについて当該訴えに係る訴訟が係属中であっても,Cは,単独で,Aに代位して,当該抵当権の設定の登記の抹消を申請することができる。
このように問題文が長文化しているのが近年の司法書士試験の傾向です。
もちろん、昔の問題にも長い選択肢はありましたが、おおむね選択肢が短文で読みやすかったのです。しかし近年の問題は、問題をめくってもめくっても長い選択肢の問題が数多く並んでいます。。
これは、必要のない知識と必要のある知識の選別が素早くできるという事務処理能力が必要とされており、この能力がないと記述を含めると時間不足となってしまう傾向があります。
模擬試験や答練などを利用してスピーディに問題を処理する時間管理能力を鍛えることも重要となります。
根抵当権は条文と過去問は記憶に刻み込む!
根抵当権は司法書士試験の不動産登記法では、理解と定着が必須です。
記述式でも出題されますし、記述式で出題されない年は必ず択一式で出題があります。
民法の学習法の記事でも書かせていただきましたが、根抵当権が詳しく問われるのは司法書士試験の大きな特徴です。(実務で必要となるためです)
根抵当権は、すべての条文(398条の2以降)と過去問をすべて覚えるほど繰り返して学ぶ必要があります。
その他勉強のコツ
よく言われることですが、不動産登記法は記述を意識して学習すると効果的です。
不動産登記法の択一で問われることの多くは、申請書で書くべきことを文字にしているというものがほとんどですので、記述を意識して学習することで具体的なイメージをもって学習することができます。
また、記述を意識して学習することで、当然のことながら記述の勉強の効率もあがり一石二鳥になります。
雛形集などを手元に置き、択一を解きながら雛形集をご覧になると一石二鳥の学習効果を得ることができます。
不動産登記法は、司法書士実務の中心となる科目ですので、いくら深く学習しても損はありません。合格後に活躍する姿をイメージし、徹底的に勉強しましょう。