刑法の勉強法とコツ

司法書士試験対策・刑法の勉強法とコツ

 

民事保全法は、どうやって勉強したらよいのだろう?


 

司法書士試験では「刑法」からも出題されます。

 

この記事では、入門者・初級者向けに司法書士試験における刑法の位置づけや勉強のコツについて、詳しく解説します。

 

司法書士試験の刑法とは?

司法書士試験の刑法は、午前択一式の科目で毎年3問出題されます。

 

午前の試験科目 出題数 配点
憲法 3問 9点
民法 20問 60点
刑法 3問 9点
商法 9問 27点

 

司法書士試験における刑法の難易度は、大学の学部試験程度にとどまります。

 

しかし、他の出題科目が10科目もある中で攻略しなければならないため、刑法は勉強量の兼ね合いが難しい科目となっています。

 

本記事では司法書士試験の刑法の基本的な理解とともに、頻出分野の紹介などをさせていただきます。効率的に司法書士試験の刑法を攻略するための参考となれば幸いです。

 

刑法の基礎

 

ではまず、刑法の基礎から解説します


 

刑法の意味と司法書士試験との関係

まずは基礎的なところからとなりますが、刑法とはどういった法律かということから確認していきたいと思います。

 

刑法とは、犯罪と刑罰に関する法律です。つまり、どのような行為をした場合に、どのような刑罰に処せられるかを定めた法律が刑法です。

 

刑法は、不動産登記法商業登記法民訴法などと比べて、非常に学習を始めやすい科目です。取り扱う事例がニュースやドラマなどからとても想像しやすい科目であるためです。

 

しかし、試験対策として学習するためには、基本的な学説や判例を理解する必要があり、難解な部分も多々あります。

 

司法書士試験との関係では、導入で述べさせていただきましたとおり、刑法の出題は大学の学部試験程度の問題しか出題されず、あまり難しい問題は出題されません。

 

そのため、深く学びすぎず、犯罪構成要件や判例を正確に理解していくことがとても重要となります。

 

犯罪論の体系と出題形式

刑法は大きくわけると、犯罪成立に関わる犯罪論と刑罰に関する刑罰論に分けることができます。そして、圧倒的に犯罪論のボリュームが大きくなっています。

 

犯罪論は、各種構成要件(構成要件=おおむね、刑法の条文のことだと最初はお考え下さい)共通の問題を学ぶ刑法総論(総論)の部分と、ひとつひとつの犯罪について細かく学んでいく刑法各論(各論)に分けられます。

 

例えばどの犯罪でも問題となり得る共犯や正当防衛に関することは刑法総論で学びます。一方で、窃盗罪や放火罪などの一つ一つの犯罪について、どういった条件(要件)が満たされれば犯罪となるのか(構成要件に該当するのか)は刑法各論で学びます。

 

(図)

 

そして、司法書士試験では、ほとんどの年で
(1)総論から2問と各論から1問
        または
(2)総論から1問と各論から2問
のいずれかの出題パターンとなっています。

 

 

司法書士試験における刑法の出題分野・学習方法

まずは財産罪からの学習がおすすめ

刑法は司法書士試験ではあまり時間をかけることができないので、頻出分野から学習することがおすすめです。

 

ほとんどの年度で出題されているのが、窃盗罪や強盗罪などの財産罪の分野です。財産罪の分野はほぼ毎年出題されています。

 

また、各論で、財産罪以外の分野から出題がされた場合には極めて基本的な理解と知識で解くことができます(誤解をおそれずに言えば、財産罪以外の各論分野は、その場で常識的に考えれば答えが出ることも)。

 

しかし、財産罪だけは構成要件や判例をしっかりと勉強していないと間違えてしまいやすい問題が多い傾向です。

 

効率的に点数を取るためには頻出分野から学習をすることが大事であることは、どの試験でも共通と思われますが、刑法では各論の財産罪が最頻出分野となっています。
この分野から学習をされることがおすすめです。

 

総論は過去問を理解することが大事

一方で刑法総論は、出題分野の偏りがあまりなく、まんべんなく出題されます。

 

具体的には、因果関係や実行の着手時期(未遂の成立時期)、正当防衛、錯誤論、共犯など総論の基本書(教科書)で重要とされている分野はすべて定期的に出題されます。

 

総論ではいわゆるヤマを張るという学習方法はあまりおすすめできません。

 

総論は、テキストを読みながら過去問を研究されて、出題されている過去問を論理的に理解することが重要です。

 

例えば、過去問の一例ですが、

 

「Aは、Bを脅迫しようと考え、パソコン上で『お前を殺してやる』との内容の電子メールを作成し、これを送信したが、その際、送信先を間違えてCに送信してしまい、Cがこれを読んで畏怖した。この場合、Aには、Cに対する脅迫罪は成立するか」(平成27年:午前第24問・改題)

 

この問題の正解は、脅迫罪が成立するというのが答えです。しかし、この過去問で出題された問題と答えを丸暗記しても、総論の問題が確実に解けるようにはなりません。

 

少し刑法の内容に入りますが、この問題を理解するためには、総論の錯誤論についての「法定的符合説」(ほうていてきふごうせつ)という学説の理解が必要になります。

 

法定的符合説の結論を簡単にご説明しますと、行為者(犯人)が思っていた結果と発生した結果に違いがあっても、同じ刑法の条文の内部の違いであれば、故意犯は成立するという学説です。(なお、法定的符合説は通説となっており、判例も法定的符合説に立っていると考えられています)

 

この学説を理解していることを前提として上述の問題について見ますと、Aは、Bという人を脅迫しようとしたものの間違ってCという人を脅迫してしまったという、同じ脅迫罪(刑法第222条)内部の違いがあったに過ぎないと言えます。

 

そのため、Cに対する故意犯(脅迫罪)の成立は妨げられないということになります。

 

このように刑法総論では、過去問で出題されている問題について、主要な学説の理解を前提に解くという訓練をしていないと、少しひねりを入れられた問題が出題された場合に正誤の判断を誤りやすくなります。

 

このように総論では、学説を理解して過去問を解くということが重要です。

 

なお、各論でも、財産罪を中心に主要な学説を理解することが重要な問題もありますが、多くは判例の事案と結論を正確に覚えていることで解くことが出来る問題が多い傾向にあります。

 

以上をまとめますと、刑法は、総論は学説を理解しつつ過去問を検討していくこと、各論は、主に判例を中心に理解をしていくことが効率的な学習です。

 

 

その他の出題分野~刑罰論からの出題

総論からは数年に一度、刑罰論の中の罪数論が出題されることがあります。

 

罪数論は成立した犯罪について、刑罰を科す際の処理のルールを学ぶ分野です。

 

例えば、住居侵入をして窃盗を犯したという事例では、犯罪は住居侵入罪(刑法第130条)と窃盗罪(刑法第235条)が成立しますが、刑罰を科す際には牽連犯(けんれんぱん)という処理方法によって、科刑上は1罪として扱われます(刑法第54条)。

 

罪数論はまれに出題される分野であり事前に学習をしておかないと対処難しい分野です。

 

罪数論が出題されそうな年には、予備校が直前予想講座やガイダンスなどで予想をしてくれます。
そのため、試験直前期は予備校のガイダンスなどを利用して罪数論が出題されそうな時には、直前に学習をしておくことが必要です。

 

また、平成30年には自首の問題が1問出題されています。
自首については、昭和の時代に少しだけ出題されたことがありますが、1問すべて自首の問題として出題されたのははじめてでした。

 

さらに、刑法では平成28年の刑法改正により、刑の一部執行猶予という新しい制度が導入されていますが、まだ司法書士試験において出題されたことはありません(平成30年現在)ので、出題予想論点のままとなっています。

 

あくまでも刑法の出題の中心は犯罪論ですが、少しだけ刑罰論に意識を向けると、「抜かりがなく」、刑法対策が万全となるでしょう。