司法書士試験での六法の使い方

司法書士試験での六法の使い方

司法書士試験は法律の試験であるので、当然、六法全書に書いてある法律の知識が出題されます。

 

では、司法書士の試験対策として、この法律知識が書かれている六法全書を実際に引いて学習する必要があるのか、ということは様々な意見があるところです。六法不要派もたくさんいます。

 

本記事では六法不要派が勉強するときの注意点、六法を使う派の効率的な使い方など、司法書士試験における六法の使い方について紹介したいと思います。

 

六法不要派でも司法書士に合格できる

必要な情報は予備校のテキストに一元化する方法

司法書士試験の合格者でも、六法を一切使わないで合格しているという人は珍しくありません。

 

では、六法を使わず、どのように法律知識を得ているかというと、予備校の基礎講座(あるいは中上級者向け講座)のテキストを利用して必要な知識をすべてまとめているのです。

 

つまり、六法不要派の人は

  • 予備校の講義中で聞いたこと
  • 講義中に講師が重要といったところ
  • 過去問で出題されたところ

 

などに赤ペンなどを入れ、何度も見返して記憶するという学習をします。

 

予備校の講義テキストには、合格に必要な知識が詰まっている

 

予備校の講義テキストには、司法書士試験で出題可能性がある知識のすべてが書かれています。むしろ、ほとんどの予備校講義テキストは、出題レベルを越える知識まで書かれているのです。

 

また、講義テキストは、混同しやすい知識、まとめて覚えておいたほうが良い知識を表などにしてまとめてくれています。正確に記憶をすれば、六法を利用せずとも司法書士試験合格に必要な知識は吸収することが可能です。

 

このように予備校の講座のテキストを利用するという必ずしも六法を使用しなくとも、合格に必要な知識を得ることは可能です。

 

そのため、六法を利用しないという学習のもひとつの方法です。(これが六法不要派の考え方です)

 

 

市販の書籍でも知識が網羅されているもの

予備校の講義テキストレベルの情報量で市販されているテキストもあります。LECから出版されているブレイクスルーというテキストです。

 

 

予備校の講座を受講しなくとも、ブレイクスルーテキストを購入すれば、司法書士試験の知識を網羅したテキストを入手して、学習することは可能です。

 

 

予備校テキストのみ利用の場合の注意点

六法を使わず、予備校テキストのみの学習は、不動産登記法・商業登記法・供託法・司法書士法では極めて有効な学習方法です。

 

これらの科目は、実務色が濃いためそもそも六法があまり役に立ちません。六法より試験でよく問われる知識をテキストを利用して覚えていったほうが効率的だからです。

 

逆に言えば不動産登記法や商業登記法は六法の条文をすべて覚えたとしても、合格することはできません。

 

そのため、不動産登記法・商業登記法・供託法・司法書士法は、六法を使用しない学習の方が効果的です。

 

 

六法を使わない派は、民法・会社法に注意

 

しかし、一方で、民法・会社法・商法(午前第35問)・民事訴訟法・民事執行法・民事保全法は条文を見ないことで必要な知識が抜け落ちてしまう可能性があります。

 

これらの科目について司法書士試験の近年の出題を見ると、「条文を覚えるほどにしっかりと条文を読んできているか」ということを問うている傾向にあります。

 

例えば、過去問では出題されていないものの、条文を引いておけば、自然に目に入る部分の条文知識などが出題されることがよくあります。

 

過去問で、ある法律の第○条第1項が頻出だったとすれば、次回の試験では同じ条文の第2項が出題されるなどといった出題が近年見られるのです。

 

このような出題傾向は民法や会社法で特に顕著です。

 

そのため、予備校テキストのみで学習していて、条文を見ないで学習をしていると、「条文を見てさえいれば簡単に解けるのに」という問題を落としてしまいがちになります。

 

さらに予備校テキストでは本試験のレベルを超える知識まで正確にまとめているので、覚える量が増えるという学習上の負担が生じます。

 

こういった点には、いわば、「六法を使わない派」は、気をつけて学習することが必要です。

 

 

 

六法を利用する場合

一方で六法を利用される場合には以下のようにして利用されると学習効率が良くなると思われます。

 

民法・会社法は、条文を自然に覚えるほど引く

民法と会社法は、特に条文を非常に正確に問うてきます。

 

そのため、民法・会社法については、問題演習をするたびに答えとなる条文を必ず六法で引くということが効果的です。出題された条文にはマーカーなどで線を引いておくのがおススメです。

 

ただし、六法を引かれた際に、その場で頑張って条文を暗記しようとする必要はありません。

 

重要条文は過去問などの演習を繰り返していると何度も同じ条文を引くことになります。
そのため、自然に覚えてしまうまでコツコツと条文を繰り返し引くという学習スタイルで条文が自然と身に付きます。

 

逆に言えば、問題を解く⇒条文を見るという流れで、自然に条文を覚えてしまうほど何度も問題演習をするということが重要です。

 

これは英語など語学の学習方法に似ているかもしれません。

 

英単語や熟語について単語帳や辞書を何度も見ているうちに自然と頭に入っているという感覚に近い学習方法です。

 

このように、六法を使われる場合には民法・会社法は自然と条文を覚えるまで繰り返すという学習スタイルが効果的です。

 

いちいち条文を引くことは、一見すると手間がかかるように見えますが、「急がば回れ」でかえって揺るぎない実力が付いていきます。

 

 

民事訴訟法・民事保全法・民事執行法は、条文知識がすぐに生きる!

次に、民事訴訟法、民事保全法、民事執行法は条文で覚えた知識がそのまま試験で出る傾向があります。

 

特に、民事保全法は条文をしっかりと覚えておけば、解くことが出来る問題の出題が極めて多い科目です。

 

民事訴訟法は、条文の知識だけでなく、基礎理論の理解(処分権主義や弁論主義の理解など)が必要な問題も必ず出題されますが、逆に条文の知識だけで解ける問題も非常に多く出題されます(少額訴訟や支払督促の知識など)

 

また、民事執行法も難しい年度もありますが、あまりに難しい場合には合格者でも正答率が高くないので、気にする必要はありませんが、条文の知識が問われる出題の場合にはほとんどの合格者は正解してきます。

 

これらのことから、民事訴訟法・民事保全法・民事執行法は、条文の知識を大切にするようにしましょう。これらの科目は条文の学習が、そのまま、しかもすぐに本試験に生きてきます。

 

 

不動産登記法・商業登記法・供託法・司法書士法は、六法は不要

上でも書かせていただきましたが、この4科目については、実務上の取扱いなどのうち、過去問で出題された知識の出題が中心となるので、あまり条文知識が生きない科目です。

 

そのため、これらについては、過去問を解かれつつ、知識のまとめ教材(例えば、直前チェック(早稲田経営出版)など)を利用して知識を整理していくことが効果的です。

 

ただ、時折、条文を問う問題もあります。(例えば不動産登記法で、仮登記を命ずる処分の申し立て先を問う問題―不動産登記法第108条第3項により、不動産所在地を管轄する地方裁判所となります。)

 

そのため、条文を問う問題に出会った際には、条文を少しだけ確認しておくことは意義があります。

 

ただ、基本的にはまとめ教材などで知識をきれいに整理することをメインにされた方が学習の効果は上がりやすい科目です。