憲法の勉強法とコツ

司法書士試験対策・憲法の勉強法とコツ

憲法は司法書士試験では、わずか3問しか出題がされません。

 

しかし、司法書士試験は1問の点差に数百人がひしめく競争試験ですので、3問だからといって軽視はできません。「たかが3問、されど3問」です。

 

ここでは憲法を効率的に攻略するための勉強法とコツを述べていきたいと思います。

 

 

憲法とはどういう決まりなのか?

憲法は中学校の公民で扱うため、どなたでも憲法という決まりが存在しているということはご存知かと思われます。

 

しかし、「憲法とは、つまりどういうものか」ということを中学・高校で正確に教えてもらったという方は少ないと思われます。

 

そこで、やや基礎的なところからとなりますが、憲法とはどういうものかということを完結にご説明させていただきます。

憲法は公権力(公務員)が守る決まり

憲法は、端的に言って国・地方公共団体(都道府県や市区町村)など公権力が守る決まりです。

 

よりざっくばらんに言ってしまえば、一般国民は原則として憲法を守る必要はありません。憲法を守らなくてはならないのは原則として公務員だけということになります。

 

別な言い方で言えば、「憲法は国が守る決まりであり、法律は国民が守る決まりである」
と分けることができます。
これは憲法の後半の次の規定を見ると書いてあることです。

 

(日本国憲法)

  • 第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
  • 第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

 

第98条は憲法に違反する法律などは無効であると書かれています。
また、第99条では憲法を守るのは公務員であって、国民とは書かれていません。

 

このように憲法は原則として、一般国民に向けられた決まりではなく、国など公権力に向けられた決まりであることが、法律との質の違いです。

 

この質的な違いを常に念頭に置かれることが憲法の判例などを理解する上でのベースになります。

 

憲法を原則として(あるいはなんとなく)国民が守るものと考えたまま基本書などを読んでしまうと、何がなんだかわからない話となってしまいます。

 

憲法は人権と統治機構の2分野

では、原則として国が守るべき憲法には何が書かれているかというと、大きく分けて2つの分野に分かれています。

 

1つが、人権といわれる分野で、国など公権力によって侵害されない国民が持っている権利についてのルールを定めた部分です。第10条(第3章)から第40条までが人権の規定です。

 

もう一つが統治機構といわれる分野で、中学校の公民などでは、国会・内閣・裁判所・地方自治などとされて学習する分野です。

 

国が国民を統治する際のルールが書かれています。第41条から第95条までが統治の規定となります。

 

なお、96条には憲法改正の手続きが、97条から99条までは憲法が国の最高法規であることが書かれています。

 

97条などは憲法理念上はとても重要な条文ですが、司法書士試験では出題される可能性は低い条文です。

 

このため、憲法の学習は具体的には国民の人権保障のルールと国の統治機構のルールを学んでいくこととなります。

 

司法書士試験における憲法の出題と学習方法

司法書士試験の憲法では、例年、

  • 人権の判例知識が1問
  • 統治機構の条文知識が1問
  • 人権か統治分野判例からやや正確な判例の理解を問う問題(穴埋め形式の問題)が1問

出題されるのが通例となっています。

 

 

憲法は司法書士試験では平成15年から導入された科目であり、出題の歴史が他の科目に比べると短い科目です。そのため、平成20年代前半頃までは出題方法が安定しない傾向でしたが、近年は出題傾向が固まってきています。

 

実質的には、2問出題される判例をしっかり学びつつ、1問出題の統治機構の条文を正確に覚えておくことが司法書士試験の憲法の対策としては効果的です。

 

司法書士試験における憲法の出題レベルは、他の法律系国家試験である行政書士試験や司法試験・司法試験予備試験などと比べると、圧倒的にやさしいレベルにとどまっています。

 

憲法の得点目安と学習のコツ

憲法の得点目安

司法書士試験の憲法は、判例と統治機構の条文を押さえれば確実に点数が取れるとはいえ、他の科目の負担が大きいため、あまり学習を割くことが難しいというのが、受験生の現実的なところです。

 

そのため、憲法は、1問程度は落としてしまってもやむを得ないものと考え、3問中2問程度を取るのが得点の目安です。

 

ただ、法学部卒業生、司法試験受験経験者、行政書士試験合格者などは、憲法は満点を容易に取ることができてしまっている傾向もあります。

 

憲法勉強のコツ~他資格問題の利用など

憲法の基本書(教科書)には具体的な国と国民の争いについて、抽象的な理論が書かれています。憲法は基本書だけではなかなか理解が進みにくいという面があるので、問題演習が効果的な学習のコツとなります。

 

ただし、司法書士試験の憲法は過去問の数も少なく、出題が現在では考えにくい問題などもあるため、司法書士試験の過去問だけでは問題演習として不十分な感があります。

 

そこで、憲法対策としては、行政書士試験や司法試験・司法試験予備試験・公務員試験など他資格の憲法の過去問を利用するという方法がおすすめです。

 

特に、近年の行政書士試験の憲法の問題は良問が多いという印象があります。

 

一方で憲法は判例などを読んでも、民法や刑法のようにイメージがわきにくい、ポイントが理解しにくいという面もあります。

 

独学が難しいと感じられる場合には予備校の憲法の講座利用がおすすめです。

 

重要判例や条文について、どこがポイントかという点をわかりやすく解説してくれます。

 

また、司法書士試験としてどこまで深く憲法を学習すれば良いかという目安(ライン)も示してくれます。

 

憲法は奥が非常に深いため、学ぶ気になればいくらでも深く学ぶことができてしまいます。

 

しかし、司法書士試験ではそれほど深い知識や理解を憲法で求めてはいないため、司法書士試験で必要な学習の目安がわかります。

 

独学で判例の読みにくさや、どこまで憲法を学習すべきかという深さで悩まれる場合には、予備校で憲法の単科講座などを購入することが効率的です。

 

憲法「鉄板」の基本書はコレ!

憲法の学習を独学される場合には、おすすめの憲法基本書は、岩波書店から出版されている芦部信喜の憲法です。

 

 

法学部出身の方はすでにご存知かもしれませんが、憲法を学ぶ際の伝統的な名著であり、司法書士試験対策としては必要十分な教材です。

 

 

余談ですが、司法書士試験合格後、司法書士会連合会研修の参考図書としても、この本は掲載されていますよ。


 

独学の場合には、芦部憲法は「鉄板」の基本書です。

 

深入りしすぎず、浅くなりすぎず

憲法は司法試験から司法書士試験に転向された方などは、やや深く学習しすぎてしまう方が時折おられます。

 

しかし、憲法にあまり深入りしすぎると、大事な民法や不動産登記法などの知識がおろそかとなってしまうおそれがあります。

 

一方で、憲法を「マイナー科目」と位置づけられて、あまり(あるいはほとんど)学習されない方もおられます。

 

しかし、1問の点差で数百人がひしめき合う司法書士試験(特に基準点=足切り点付近)
で憲法を捨ててしまうのは極めて不利になります。

 

憲法は司法書士試験では深く入り込みすぎず、それでいて軽視しすぎないという「ちょうど良い接し方」で対策をされることが大切です。