司法書士試験勉強のはじめ方
この記事では、これから司法書士試験の学習始めようかと考えておられる方(あるいは司法書士試験の受験を始められたばかりの方)を念頭に置いて、効率的な勉強法をまとめていきたいと思います。
司法書士試験は合格まで相当な労力と時間がかかる試験です。また、試験が年に1回、1日しかないというのも大きなプレッシャーとなる試験です。
本記事がこれから司法書士の勉強を始められる方の学習のお役にたてば幸いです。
法律の勉強が完全に初めての方
まずは、これまで全く法律の勉強をしたことがない方の勉強のはじめ方を紹介します。一般的には予備校や通信講座を利用しますが、独学もする場合も紹介します。
予備校の「基礎講座」の利用が最適
何らかのきっかけで法律・司法書士試験に興味を持たれた方で、これまで法律学習の経験がまったくないという方の場合には、資格試験予備校の基礎講座(入門講座)を利用されるのが最適です。
法律はかなり独特の思考パターンを取ります。
そのため、ご自身で最初から法律の書籍を読まれても、なかなか理解するまでに時間がかかってしまいます。
司法書士試験の難易度を鑑みると、完全独学での合格は難しいため、全期間でなくとも所々資格予備校を活用する方が効率的に学習できます。
参考 司法書士の難易度
資格予備校には法律初学者の方が、司法書士試験合格までに必要な思考と知識を必要十分に提供する講座がしっかりと用意されています。
司法書士試験の基礎講座を利用されることで、独学で学ぼうとすれば10時間かかってしまう部分を1時間程度でまとめてくれます。
法律が初めてという方が効率的に学習するためには、資格試験予備校の基礎講座の利用されることが強くおすすめです。
司法書士試験の講座を扱う大手の資格試験予備校としては、LEC、TAC、伊藤塾、辰巳法律研究所などがあります。
最近では、資格スクエアやスタディングといった大手資格予備校から有名講師を招きいれて、安価な講座を提供している資格予備校もあります。
この中でも特にLECとTACの基礎講座は、実力派講師によるわかりやすい講義として定評があります。
また、社会人の方の場合、会社で雇用保険に加入されているはずですので、国が行っている教育訓練給付金制度を利用されれば、2割引きで基礎講座を受講することが出来ます。
法律という「森」は、一度道を間違ってしまうとなかなか戻ってくることが難しくなります。法律学習が初めての方は予備校の基礎講座の利用が大変おすすめです。
独学で勉強していく方法
司法書士講座を受講したいけれど、費用の捻出が難しい方もいますよね。ならば、独学からはじめましょう。
予備校の司法書士講座を受講したいけれど...受講料が高いから「とりあえず、最初は独学で司法書士試験の勉強をのぞいてみたい」という方には、オートマシリーズがおすすめです。
このオートマシリーズの著者は、東大卒、司法書士試験に半年で合格し、その後、長年にわたって司法書士試験の指導経験豊富な山本浩司先生という方です。
山本先生のオートマシリーズは、司法書士試験を「独学可能にした」と評されるほどわかりやすい説明で、法律学習が初めての方でも法律の発想が身につくように書かれています。
実際、このオートマシリーズを利用して、独学で司法書士試験を合格したという方もいます。
「基礎講座を買うまでは決意は固まらない、でも、司法書士試験に興味はある」という方はまずオートマシリーズで法律の考え方から学ばれると良いでしょう。
法律の学習経験がある方
壁は会社法と登記法!
司法試験学習経験や、法学部生(ないしは卒業)で法律の基礎理解、基礎知識がある方が、司法書士試験にチャレンジする場合、会社法と登記法(不動産登記法・商業登記法)の攻略が重要となってきます。
逆に言えば、会社法と登記法が攻略できるようになれば合格は見えると言えます。
参考 商法の勉強法とコツ
会社法は登記を前提にしている点に要注意
法律の学習経験がある方であれば、会社法を学ばれたという方も多いことでしょう。
司法書士試験においても、会社法を学ぶ必要があるのですが、注意すべきことがあります。
大学や司法試験等で学ぶ会社法は訴訟を前提とした法解釈・事実認定を中心に学ぶ一方で、司法書士試験の会社法は、訴訟を前提とせず、登記申請のための法知として学びます。
同じ会社法でも、学習するゴールがまったく違うのです。
そのため、司法書士試験の会社法は、独自の別科目としてとらえられることが大切です。
例えば、会社法第911条!司法書士試験では極めて重要になるんですよ。
会社法第911条には、株式会社の登記事項が掲載されており、司法書士試験の合格者は911条を覚えるくらい見ています。
司法書士試験以外で911条を何度も見るという会社法学習をする試験はないと思われます。
そのため、会社法と次で述べる登記法だけは、予備校の基礎講座を利用することが効率的な学習にはおすすめです。
会社法と商業登記法は、連続性が強いため、予備校では一科目としてまとめて扱っていることが多くあります。
登記という独特の手続法
法律既学習の方が会社法以外で力を入れていただきたい科目が登記法(不動産登記法・商業登記法)です。
司法書士は、「登記」のプロですからね。登記法は非常に大切です。
手続法は、法学部等では、民事訴訟法、刑事訴訟法、行政法の一部として行政事件訴訟法などを学ばれると思います。
これらの手続法は、基本的に裁判所での判断を前提とした訴訟のルールについて定められています。
しかし、不動産登記法・商業登記法は根本的に発想が違うのです。
登記法は実体法の権利変動過程を正確に係公示しつつ、国民の利便を図るということを目的としているため、基本的に実体法に従属的であるものの、公示目的達成のために非常に技巧的な部分もあります。
やや法律の内容に入りますが、例えば、民法で時効取得は原始取得であると、法学部等で学ばれると思われます。
しかし、不動産登記において、取得時効を原因として権利が移転した場合には承継取得と同じ登記申請をすることになります。(具体的には、「時効取得を原因とした所有権移転登記」という登記を申請します)
これは、時効取得を原始取得とする民法理論からしたら論理的ではありません。
しかし、登記を閲覧する一般の方としては「Aという人の土地をBという人が時効取得したんだな」とすぐにわかるようには、承継取得と同じ登記申請をした方が利便にかなうため技術的に許容されている扱いです。
不動産登記法と商業登記法は、特殊な法手続き部分が多いため、正直なところ独学での習得はとても困難です。少し費用はかかりますが、登記法についても予備校や通信講座を利用する方がよいかもしれません。
登記法は択一式での出題も多い上に記述でも出題され、司法書士試験合格のためにはマスターが必須です。基礎講座をまず受講し、何度も何度も何度も反復することが重要です。
民事訴訟法も注意
司法書士試験の民事訴訟法は、簡易裁判所における特則、少額訴訟、支払督促、手形、小切手訴訟など第一審の手続きとしては一般的にあまり学ばない点も非常に重要となります。
こういった分野について、試験直前には条文をほぼすべて覚えている状態になっていることが必要です。
こういった分野は独学でも十分可能と思われますが、通常の第一審手続き(地裁の手続き)と同じ点、異なる点などがよく狙われるので知識を混同しないよう整理されておきましょう。
参考 民事訴訟法の勉強法とコツ
過去問はすぐに始める
過去問は、司法書士試験では極めて重要です。特に択一式については、合格者の多くは、過去問を出題年度まで覚えてしまうほど繰り返し行っています。
択一1問、記述0.5点の差で合格が1年先になってしまう司法書士試験では、合格者は確実に過去問で出題された問題はマスターしてきます。
どのような学習方法を取られるにしても過去問は1日も早く取り組まれてください。
講義などを受講した部分を分野別過去問で学習すると効果的です。