司法書士に向いている人
自分は司法書士に向いているのだろうか?やっていけるのだろうか?
司法書士の高い難易度もさることながら、もし仮に合格できたとして自分は司法書士として仕事をやっていけるのか?
受験を検討している方やこれから本格的に勉強を始める方向けに、司法書士業務の特徴をお伝えしつつ、向いている人の特徴を紹介します。
法律関係の資格は、司法書士以外にも、行政書士や弁護士、社会保険労務士などいくつもあります。
法律系の資格を取得するためには労力もお金もかかりますから、一般的に司法書士が向いていると思われるタイプを述べてみたいと思います。
あくまで参考程度ですが、ご自身が司法書士に向いているかどうかのひとつの目安とされて頂ければ嬉しく思います。
仕事が几帳面な人は司法書士に向いている
ミスが許されない司法書士業務
司法書士業務の登記業務は、ミスがあれば極めてわかりやすく、同時に責任の所在も明らかになります。
そのため、仕事に関しては過剰なほどに几帳面で一言一句を間違いなく確認することができる性格の方が向いていると言えます。
極端な例で、かんたんに説明します。
例えば、「斉藤太郎」さんという方の名義を、誤って「斎藤太郎」さんという名前で登記申請をしてしまったら、誤った登記を申請したということとなり、更正登記を申請しなければなりません。(登記研究401・159)
また、いわゆる「仮登記」というものがされている場合に仮登記を本登記とする場合には、所有権移転(○番仮登記の本登記)という()を書き忘れてしまったら大変です。
これは更正登記(誤りを直す登記)すら認められず、最悪の場合、仮登記名義人の方が(民法の対抗関係という理屈によって)権利を失ってしまう可能性もあります。
この場合に司法書士にミスがあれば損害賠償責任は免れません。
司法書士に限らず、どのような仕事でもミスが許されないのは当然です。しかし、司法書士の登記業務では一言一句のミスが命取りになります。
したがって、仕事、特に登記業務に関しては過剰なほどに几帳面である方が司法書士業務に向いていると言えます。
もちろん、仕事を離れれば大雑把であっても構いません。むしろその方が好感を持たれて仕事につながりますけどね。
司法書士試験にも几帳面さが要求される
業務で要求される几帳面さは、司法書士試験で既に試されます。
例えば、司法書士試験の記述では「申請すべき登記が複数あり、先後関係を問わない時には登録免許税が高い順に申請するものとする」などといった注意書きがついていることがあります。
この場合に、Aという登記(高額)とBという登記(低額)について、両者の申請の順序は、理論どちらが先であっても構わないとしても、Bを先に答案に書いてしまえば、失点は免れません
司法書士試験は相対評価ですので、どの程度の失点となるかは一概には言えませんが、間違いなく点数は下がります。
なお、模擬試験の場合には、申請順序の誤りは一切点数がつかず、0点とされるのが一般的です。
注意書き1行を見落としてしまったというだけで、理論的に間違いがなくとも点数が引かれます。司法書士試験はとてもシビアな試験なのです。
こうしたことからも、司法書士には仕事に対する几帳面さを求められていると考えたほうがよいでしょう。今几帳面でなくても、合格する頃には几帳面にならざるをえない試験ともいえますうよ。
将来、独立開業したい方は司法書士に向いている
一般的には独立志向の方
司法書士は一般に独立開業型の資格ですので、将来的に自分自身で独立して仕事をしたいという性格の方に向いています。
独立司法書士は稼げますからね。
稼いでやるという野心がなくても、報酬単価が高いため趣味や家庭と両立しながら自分のペースで働きたいという方にも向いています。
参考 司法書士の年収
宅建士と比べてみましょう。
宅建士を取得する人の中には自ら不動産業を開業される方もいますが、大半の宅建士の資格保有者は不動産屋会社などに勤めます。
宅建士資格は基本的には不動産会社に所属して、会社組織のために役立てるための資格です。
参考 宅建士が人気な理由
これと比較すると、司法書士は基本的には独立型の資格なのです。
登記業務の準備などはもちろん、特に、訴訟業務(簡裁代理・裁判書類作成)は、ご自身の判断で必要な主張と立証を考えなくてはなりません。
誰からも指示をされない代わりに全責任を引き受けるというタイプの方が司法書士向きと言えます。
言い方をかえれば、会社組織などにはあまり合わないという性分の人に適性があるともいえます。
組織ではできない仕事を自己責任でやっていく、その代わり高い報酬がほしい、という独立心たくましい方が司法書士に向いているのは間違いありません。
とはいえ、組織内・企業内司法書士も「あり」
伝統的には、司法書士は独立系の資格でしたが、最近は必ずしもそうは言えなくなってきています。
司法書士法人に勤めたり、司法書士の資格を持って一般企業で働かれる方(企業内司法書士)も増えてきています。大企業であれば年収もかなりの額がもらえます。
司法書士法人や企業内司法書士であれば、自分ひとりの判断のみに従ってやっていくというよりも、周りと足並みを合わせて、法人や会社から命じられた業務を行うことが重要となってきます。
そのため、協調性が強い方であれば、司法書士の資格を組織内で活かすことも十分可能になってきています。
司法書士法人や企業内司法書士の拡大で、必ずしも独立心がなければ司法書士に向かないとは言えないという具合に変わってきています。
詳しくは、以下の記事で詳しく解説しましたので、ご覧ください。
調和、利害調整が得意な方も司法書士に向いている
司法書士は基本的に平和産業
司法書士は、紛争・トラブルを好まない方が向いている面があります。争いのない状態で円滑に法務手続きをするのが、司法書士のメイン業務だからです。
例えば、司法書士の「花形業務」と言われる立ち会い決済業務では、売主・買主双方の間で円満に不動産売買が行われ、かつ、間違いのない登記を速やかに申請することが司法書士の役割です。
決済業務にトラブルや紛争が生じる余地はありませんし、生じさせてはいけません。
※決済業務...不動産売買等に関する手続きに立ち会って、売買契約の成立を確認した上で、即時に登記申請をする業務
簡易裁判所の代理権を取得している司法書士(認定司法書士)は一定の範囲で、トラブルの代理人となることができます。
トラブルは弁護士の仕事
法律というと、一般的には、意見・主張が食い違っている場合に法と証拠で白黒をつける訴訟がイメージされるかと思われます。
しかし、訴訟は基本的には弁護士のフィールドであり、司法書士は、円満な法務手続きの実現が基本的な業務姿勢です。
そのため、論争やトラブル解決といった面に興味が強い場合には司法書士よりも弁護士を目指された方がよいでしょう。
逆に、トラブルにはあまり関わりたくないといった性格、当事者の利害を調整して円滑に物事を進めることが好きという方には司法書士は大変向いていると言えます。
時には、毅然とした振る舞いをすることも必要
司法書士は平和産業とはいえ、お客さんの言うことをなんでも言うがままにこなすだけというだけでもいけません。
法律に照らして、違法・不当と考えたときには毅然とした態度を取ることができることも司法書士としては重要です。
例えば、不動産決済で、当日いきなり、売主の息子さんだけがこられて「名義人の父親は急病で来ることができない。
連絡も今はできないが、委任状は持ってきているからさっさと手続きをしてくれ」などと言われた場合には、基本的にその日の決済は「することはできない」ときっぱり宣言することが必要です。
売主の売却意思が確認できないのに、決済を進めては売主の方の財産を侵してしまうおそれがあるからです。
司法書士の世界では、よく「人・物・意思の確認」といわれますよ
このような場合には、売主・買主・不動産業者などのその場の「空気」に負けず、毅然と「売主の意思が確認できない以上は、決済はできません」とはっきりと言わなければなりません。
こうした毅然とした態度を取ることができるということも、国民の財産を守るという司法書士の使命(司法書士法第1条)からは必要となってきます。
まとめ
長々と説明してきましたが、まとめると3つです。
- 仕事が几帳面な人
- 独立志向の高い人
- 調和、利害調整が得意な人
これらに該当する方で、司法書士試験にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
ただし、向いてるからといって、司法書士試験の難易度は非常に高いので合格できるとは限りません。
司法書士を目指すにはそれなりの覚悟や目標をもっていないと途中で挫折してしまいますが、合格した暁には人生の選択肢が広がります。
ぜひ、がんばりましょう!