司法書士法の勉強法とコツ
司法書士法は、どうやって勉強したらよいのだろう?
司法書士試験では「司法書士法」から1問だけ出題されます。司法書士のための法律なので学習必須ですね。
この記事では、入門者・初級者向けに司法書士法の位置づけや勉強のコツについて、詳しく解説します。
司法書士試験の司法書士法とは?
司法書士法は司法書士試験の午後科目に択一式で1問出題されます。
午後の試験科目 | 出題数 | 配点 |
---|---|---|
民事訴訟法 | 5問 | 15点 |
民事執行法 | 1問 | 3点 |
民事保全法 | 1問 | 3点 |
司法書士法 | 1問 | 3点 |
供託法 | 3問 | 9点 |
不動産登記法 | 16問 | 48点 |
商業登記法 | 8問 | 24点 |
出題のポイントさえ押さえておけば、現場の常識的な判断でも十分正解できます。
本記事で司法書士法の頻出分野や最近の出題傾向などを知っていただければ幸いです。学習のコツを押さえて、確実に得点するようにしてください。
司法書士法の基礎
ではまず、司法書士法の基礎から解説します
司法書士法の内容
司法書士法は、司法書士の役割と業務活動について定められている法律です。
法律専門職として、行政書士には行政書士法があり、税理士には税理士法、法曹である弁護士には弁護士法があります。
国家から一定の業務(仕事)を独占することが認められている代わりに、適正に業務が行われるように法律による具体的な規制が定められています。
司法書士は登記などを通し、不動産など国民の重要な財産の権利を守るという公益的な業務を独占して行うことができます。
そのため、司法書士としての役割、業務活動で守るべきルールが定められているのが司法書士法です。
司法書士法の重要な義務の一つとして秘密保持義務が定められています
これは、正当な理由がなければ、司法書士は職務上知り得た秘密を漏らしてはならないという義務です。
司法書士への相談は財産や身内のことなど、非常にプライベートな内容となります。そのため、刑事裁判など正当な理由がある場合ない限りは、相談などを通して知った秘密は墓まで持って行かなくてはてはなりません。
こういった司法書士としての責務が司法書士法には定められています。
司法書士法の出題傾向
さて、司法書士法では司法書士の役割や業務活動で守るべきルールが定められていますが、司法書士試験で主に出題される分野は2つです。
- 簡裁訴訟代理関係業務に関するルール
- 司法書士法人に関するルール
この2分野が司法書士試験でとてもよく出題される分野となっています。
司法書士法は一時期、試験科目からはずされていた時期がありました。
しかし、平成14年の司法書士法改正により、司法書士には簡易裁判所における代理権が与えられ、また、司法書士法人を設立することができるようになり活動の幅が大きく広がりました。
そこで、新しく増えた簡裁代理に関する活動のルール・司法書士法人に関する活動のルールを知っておく必要があるとして、再度、司法書士法が出題科目となったという経緯があります。
このような経緯から、司法書士法の出題の中心は、簡裁訴訟代理関係業務に関するものと司法書士法人に関するものが中心となっています。
司法書士法を学習する場合には、この2分野をメインとして学習されれば基本的には十分であると言えます。
司法書士法の勉強のコツ
業務を行い得ない事件を例にして
次に、司法書士法で出題される問題の一例として、少し理解がしにくい「業務を行い得ない事件」(司法書士法第22条)を見てみたいと思います。
司法書士は依頼者がいても、一定の事件は受任することができません。つまりせっかくのお客さんが来ても仕事をお断りしなければならないというルールがあります。
これは、主に裁判書類作成関係業務と簡裁訴訟代理関係業務におけるルールであり、司法書士試験でもとてもよく出る問題です。
以下、過去問を見て業務を行い得ない事件を検討してみましょう。
司法書士法人がXの依頼を受けて受任した裁判書類作成業務について,当該司法書士法人の使用人として自らこれに関与した司法書士は,Xが同意した場合には,当該裁判書類作成業務に係る事件のXの相手方であるYから,個人の司法書士として当該事件に関する裁判書類作成業務を受任することができる。○か×か
問題文の状況を図などで示すと以下のようになります。
司法書士法人
↓
使用人司法書士
(法人に勤務している司法書士)
司法書士法人は、XからYに対する裁判書類の作成を依頼された。
↓
司法書士法人Xに勤めている司法書士がこの裁判書類作成の仕事に自ら関与した。
↓
この裁判書類作成に自ら関与した司法書士は、Xの同意があれば、Yから個人でこの裁判書類に関する仕事を受任しても良いか。
答えは、×(受任することができない)ということになります。根拠は司法書士法第22条第2項第2号です。
これは、問題文として読むとなかなか理解しにくいかもしれません。しかし、図も含めて考えていただければ、このような仕事の受け方を認めれば、Xさんの利益を大きく損ねることがわかるかと思います。
自ら仕事に関与しているのですから、Xさんがどのような証拠を持ち、どのような主張をしてくるのか、「手の内」がわかっているのです。
それにも関わらず、Xさんから見れば、敵となるYさんの裁判書類仕事も受けてしまっては、Xさんは相当不利になります(また、同時に司法書士法人は両方から報酬を受け取ることができてしまいます)。
このようなことは、Xさんの同意があっても、司法書士への信頼のために認めるべきではないので、法律で規制しています。
このように業務を行い得ない事件とは、司法書士としての信頼を揺るがす(ある意味常識ともいえます)であることを定めています。じっくりと検討されればきっとご理解いただける内容と思われます。
ただ、午後の部の試験は記述もある関係から、時間との勝負となるため、じっくりと司法書士法の問題を検討する時間はないと思われます。
上記の問題であれば、30秒程度で正誤を判断しなければ、司法書士試験では時間が不足します。
そのため、多くの方が苦手としやすい、司法書士法人の規律、特に業務を行い得ない事件については、少しだけ早めに学習することが重要です。
一度理解をすれば常識的なものなので、忘れにくいという点も司法書士法の正答率が例年高いことに現れています。
その他の出題分野と対策
懲戒
司法書士は、司法書士法等に違反した場合には、懲戒処分を受けます。
この懲戒についてのルールも比較的多く出題されます。
1問、出題例を見ていきたいと思います。
司法書士法第2条は、「司法書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならない。」と司法書士の職責について定めているが、これは訓示規定であるので、同条違反を理由に懲戒処分を受けることはない。
誤り。司法書士法2条の品位保持義務違反は懲戒事由となります。
その他、司法書士に対する懲戒権者は(地方)法務局長であること(×司法書士会、日本司法書士会連合会)、懲戒処分の内容としては①戒告②2年以内の業務停止③業務禁止の3種類であること(×登録の取消しなどは懲戒処分としてはできない)、などが出題されます。
業務知識の問題
近年の問題では、簡裁訴訟代理関係業務と司法書士法人に関する問題が「ネタ切れ」となっているためか、昭和・平成初期の頃に出題されていた司法書士の業務知識に関する出題も見られます。
例えば、
「司法書士は、日本司法書士会連合会の定める様式により事件簿を調製しなければならず、その事件簿は、閉鎖後5年間保存しなければならない。○か×か
○ 司法書士法施行規則第30条・領収証の保存期間が3年(同29条)との知識の混同を狙ったものと考えられます。
業務知識に関する問題は、一見すると非常に細かいですが、ほとんどすべてが過去問の焼き直しとして出題されているため、過去問を検討されれば十分です。