司法書士の試験概要

司法書士の試験概要

本記事では、これから司法書士試験を目指される方・司法書士試験に興味がある方に向けて司法書士試験制度の概要を説明させていただきたいと思います。

 

可能な限りリアリティを感じていただくことができるよう、願書の入手から最終発表までの流れを時系列で、かつ、具体的な情報を盛り込みながらまとめました。

 

司法書士試験にご興味がある方の導入としてご参考になれば幸いです。

 

司法書士試験の概要

司法書士試験の受験科目は、大きく分けると択一式と記述式に分けることができます。午後の部の3時間で、択一式と記述式が同時に実施されるのが特徴です。

 

時間帯 試験時間 出題形式
午前の部 9:30~11:30 2時間 多肢択一式
午後の部 13:00~16:00 3時間 多肢択一式+記述式

 

 

試験の配点

試験 問題数 配点
多肢択一式(午前) 35問 105点
多肢択一式(午後) 35問 105点
記述式(午後) 2問 70点

 

試験の配点は択一式が1問3点で210点満点、記述式が70点満点です。択一式の点数で約20%まで絞られる足切り制度があるのが特徴です。詳しくは下部で解説します。

 

 

 

司法書士試験の流れ

司法書士試験は年に1回、1日だけで実施されます。司法試験などは4日間にわたって実施されますが、司法書士試験は1日ですべて試験が完了します。

 

まずは司法書士を受験するまでの具体的な手順を確認してみたいと思います。簡単な図ですが、フローチャートでご確認ください。

 

時期 ポイント
受験願書配布 4月頃 受験資格は一切なし
出願 5月中旬 受験料8000円
筆記試験 7月の第1日曜日 5時間
択一基準点の公表 8月初旬 足切り基準
筆記試験の合格発表 9月末~10月初頭 事実上の合格発表
口述試験 10月中旬 原則全員合格
最終合格発表 10月末~11月初頭 上位4%が合格

 

司法書士試験では、約1ヶ月後のお盆前に法務省から公式な択一式の基準点(足切り点)が発表されます。

 

その後、9月末~10月初頭に筆記試験の合格発表があり、10月中旬の口述試験を経て、10月末~11月初頭に最終的な合格発表があります。

 

司法書士試験には受験制限が一切ありません。年齢、学歴、国籍など一切問わず誰でも受験をすることが可能です。

 

 

 

司法書士試験の試験科目とその特徴

司法書士試験の試験科目と特徴について、
①午前択一式、
②午後択一式、
③記述の3つにわけて紹介します。

 

① 午前の択一式の試験科目と特徴

午前択一は毎年午前9時半から午前11時半までの2時間実施されます。出題される科目とそれぞれの出題数、配点は以下の通りです。

 

試験科目 出題数 配点
憲法 3問 9点
民法 20問 60点
刑法 3問 9点
商法 9問 27点

 

科目と問題数は、憲法3問・民法20問・刑法3問・商法9問(会社法8問、商法総則商行為法1問)の合計35問です。なお、配点はどの問題も変わらず、すべて1問3点です。

 

法学部出身の方などは学部で学ぶ馴染みのある科目が多いです。ただ、出題内容が他の法律系国家資格と比べるとやや特徴的な面があります。

 

例えば、民法では担保物権がもっとも出題数が多く(5問)、他の資格ではあまり重視されない先取特権や根抵当権などが頻出です。

 

また、会社法は、極めて細かい条文知識が問われ、午前択一では会社法で苦労される方が非常に多い具合です。その一方で憲法と刑法は難易度が低めに設定されています。

 

 

午前の択一式科目の勉強法については、下記記事をご覧ください。


 

 

 

 

② 午後の択一式の試験科目と特徴

午後の択一は毎年午後1時から4時までの3時間で記述式と同時に実施されます。

 

そのため、午後択一だけの時間というのは設定されておらず、1時から4時までの3時間で、記述式とバランスをとりながら解いていくこととなります。

 

一般的には午後択一には65分~70分程度をかける方が多いです。出題される科目とそれぞれの出題数、配点は以下の通りです。

 

試験科目 出題数 配点
民事訴訟法 5問 15点
民事執行法 1問 3点
民事保全法 1問 3点
司法書士法 1問 3点
供託法 3問 9点
不動産登記法 16問 48点
商業登記法 8問 24点

 

午後択一の科目と問題数は、民事訴訟法5問・民事執行法1問・民事保全法1問・司法書士法1問・供託法3問・不動産登記法16問・商業登記法8問の合計35問です。なお、配点はどの問題も変わらず、すべて1問3点です。

 

法学部出身の方でも、民事訴訟法以外は、馴染みのない科目が多いのが午後択一の特徴と言えます。

 

不動産登記法などは宅建士試験などでも一部出題されますが、司法書士試験ほど登記法を正面から問う資格試験はないと思われます。

 

また、供託法や司法書士法、商業登記法は司法書士試験ならではの出題です。

 

午後択一は時間配分が大変難しいです。
同時間に実施される記述式の試験の時間も十分確保しなければならないため、深く考えたり、知識を思い出している時間はなく、スピーディに解答をしていくことが必要です。

 

 

午後の択一式科目の勉強法については、下記記事をご覧ください。


 

 

 

③ 記述式~不動産登記法と商業登記法

記述式は、ほぼ白紙の紙が配布され、問題文掲載の事実から模擬の登記申請書を作成するという試験問題です。

 

問題文には、登記事項証明書や契約書、会社の議事録などがたくさん添付されており、その上で様々な事実経過や司法書士の事情聴取記録などが記載されています。

 

※登記事項証明書とは...法務局で見ることができる土地や会社の記録のようなものです

 

問題分の分量

問題分の分量は、不動産登記法・商業登記法でそれぞれ10ページ程度になっているのが例年の分量です。

 

添付されている書類と事実経過から、申請すべき登記を判断し、正確に記述していくこととなります。

 

時間配分

時間配分は、択一式に60~70分程度をかけた後、不動産登記法に60分から70分程度、商業登記法に50分から40分程度をかけるというのが現実的な時間配分です。

 

商業登記法の記述は、ほとんど時間がない状況で処理しなければなりませんから事前の訓練が相当必要となります。

 

記述式試験は採点はブラックボックス

司法書士試験の記述式試験は、採点がブラックボックスであり、どの部分ができれば何点が入るかということが一切わかりません。

 

このため、択一を突破した受験生は7月の受験から9月末頃の発表まで、約3ヶ月もの間、結果待ちとなり、精神的に辛い状況で待たされることになります。

 

 

記述の問題は、基本的な部分は、おおむね実務に即しており、特に商業登記法は基本的な実務はこなせるレベルの出題となっています。


 

 

司法書士の合格基準

司法書士試験には足切り制度があります。筆記試験後、約1ヶ月後のお盆前に、法務省から公式な択一式の基準点(足切り点)が発表されます。

 

司法書士試験では、択一式試験(210点満点)と記述式試験(70点満点)が実施されますが、択一式試験の基準点の発表は受験後、比較的早く発表されます。

 

ただ、正式な成績通知は9月末頃から10月初頭の筆記試験の合格発表後にしか発送されません。

 

8月時点でご自身の択一式試験の点数を確認するためには、問題用紙にご自身が答えた解答番号に試験中に印をつけておくなどしておくことが必要です。

 

 

択一式試験で、受験生は約20パーセント程度まで絞られる

択一式試験で、司法書士試験受験者の約20パーセント程度まで絞られます。択一式試験を突破した方だけが記述式の答案が採点がされることとなります。

 

 

つまり、択一式試験で「足切り」になってしまうと記述式問題の採点をされることはありません。


 

筆記試験発表後の成績通知では、記述の点数欄には、「-」が記載されて、採点されなかったことが通知されます

 

 

択一式と記述式の双方の基準点を超えた方で上位600人程度が合格

そして、記述式にも基準点(足切り点)が設定されるため、択一式と記述式の双方の基準点を超えた方で上位600人程度が筆記試験で合格することとなります。

 

こうした採点方法により、司法書士試験の合格率は出願者ベースで約3%、受験者ベースで約4%となります。

 

 

口述試験は原則全員合格

筆記試験で合格されれば、その後に口述試験が実施されます。

 

ただ、口述試験は替え玉受験をしていないかの確認程度に行われるものであり、遅刻さえしなければまず落ちることはありえません。

 

 

大幅に間違った回答をしても、生年月日や写真の照合で替え玉でないことさえわかれば「勉強をしておいてください」で済みますよ


 

筆記試験の合格が、事実上、司法書士試験の最終合格となります。

 

その後は、研修や就職、独立などといった形で、司法書士の資格をご自身のライフプランに合わせて自由に使うことができるようになります。

 

以上が司法書士試験の制度のおおむねの概要です。

 

 

 

代表的な司法書士講座

「司法書士の難易度」の記事で詳しく解説していますが、司法書士試験の難易度は非常に高いです。

 

ずっと資格予備校を使い続ける必要はありませんが、基礎を身につけるため、あるいは、苦手分野を克服するため、など一時的に講座を受講する方が効率的に学習をすすめることができます。

 

以下の記事に、代表的な司法書士講座の特徴や評判をまとめていますので、参考にしてみてください。