民事訴訟法の勉強法とコツ

司法書士試験対策・民事訴訟法の勉強法とコツ

 

民事訴訟法は、どうやって勉強したらよいのだろう?


 

司法書士試験では「民事訴訟法」からも出題されます。

 

この記事では、入門者・初級者向けに民事訴訟法の位置づけや勉強のコツについて、詳しく解説します。

 

司法書士試験の民事訴訟法とは?

民事訴訟法は午後の択一で5問が出題されます。

 

午後の試験科目 出題数 配点
民事訴訟法 5問 15点
民事執行法 1問 3点
民事保全法 1問 3点
司法書士法 1問 3点
供託法 3問 9点
不動産登記法 16問 48点
商業登記法 8問 24点

 

民事訴訟法(以下では「民訴法」と略)は、司法書士試験の受験を始めるまでの学習経験にもよりますが、仮に初めて民事訴訟法学習をされる場合には、かなり理解がしにくい科目となります。

 

民訴法を初めて学習する方に向けて、具体例をあげながら民訴法の基本原則のポイントを可能な限りわかりやすくご説明させていただきます。

 

 

民訴法入門~民事裁判と基本原理

 

ではまず、民事裁判と基本原理について


 

民事裁判でしていること

民訴法の基本原理をご説明する前に、そもそも民事裁判とは何をしているのかということを簡単にご説明させていただきます。

 

裁判は誰でも見ることができます(憲法第82条・裁判の公開)。
そこで、民事裁判の傍聴に行かれるとほとんどの場合、以下のようなやり取りで終わってしまうことになります。

 

裁判官:原告(代理人)は書面を陳述しますか。
原告側:はい。
裁判官:被告(代理人)は書面を陳述しますか。
被告側:はい。
裁判官:それでは、次回期日は~でよろしいですか(日程の調整)

 

この間、約5分から10分程度です。民事裁判は、証拠調べという手続き以外はあっという間に終わってしまいます。

 

このやりとりで何がしたいのかといいますと、民事裁判では、原告が主張している権利があるかどうかを確認しようとしているのです。

 

例えば、AさんがBさんに家具を売ったのに、いつまでもBさんは代金を支払わないとすれば、Aさんは原告(訴える人)となり、Bさんを被告(訴えられた人)として、売買代金支払請求をします。

 

この場合、Aさんの売買代金支払い請求権という権利があるかどうかを民事裁判では調べるわけです。(逆にBさんとしては、代金支払請求権がないということを主張してAさんの権利を争います)

 

そして、Aさんの権利が発生しているかどうかの説明をそれぞれ原告となったAさん・被告となったBさんが書類で書いて裁判所に提出して、「書面のとおり主張します」とやっているのが、民事裁判の手続きとなります。

 

こう考えていただければ、先ほどの民事裁判のやりとりの意味もご理解いただけるのではないでしょうか。

 

このように民事裁判では、原告は自分の権利があるという主張を、被告は原告の権利がないという主張をそれぞれ書面でしているということになります。

 

民事裁判の基本原理~言わないことはないことにされる

一般の生活では、日本では「黙して語らず」という謙虚な姿勢を取るのが大人の対応とされます。
しかし、民事訴訟では、語弊を恐れずに言えば、黙っていると負けてしまいます。

 

民事訴訟を学ぶ上で理解が欠かせない重要ルールとして処分権主義と弁論主義というルールがあります。

 

この2つのルールの理解は民事訴訟法の攻略に絶対に必要となります。

 

両方は使われる場面が異なるのですが、共通点として、言わなかったことは裁判上ではなかったこととされるということです。

 

例えば、上の例で、Aさんが家具の売買代金を、「本当は120万円で売ったんだけれど、控えめに100万円で売ったということにしておこう(20万円分については言わない)。」と、Aさんが勝訴しても絶対に代金は100万円しか認められません

 

一方で、Bさんが「家具の代金を払わないのは、Aさんに騙されたからなんだが、これはAさんの態度を見てもらえば裁判はわかってくれるはずだ、詐欺とか騙されたとか言うと大事になるかもしれないから言わないでおこう」などとしていると、Aが詐欺をしたかどうかということは一切審査されません

 

このように民事裁判では、言わないことはなかったこととされ、自分の権利を守るなら言うべきことはすべて自分で言うという自己責任が基本です。

 

こういったイメージを持たれるだけでも民訴法は相当理解がしやすくなります。

 

認定司法書士になると訴訟活動もできる

司法書士は合格後に認定考査(試験)に合格すれば、簡裁代理権を持ち、簡易裁判所では弁護士と同様に依頼者の権利を守るための訴訟活動をします。

 

また、地裁以上の裁判では本人が訴訟をされる際の書類作成としてサポートすることが司法書士法の業務として定められています。(司法書士法第3条第4号)

 

民訴法のルールをしっかり理解しておかないと、依頼者に正当な権利があるのに、敗訴してしまうという結果になります。

 

言うべきことは全て言わなければ負けてしまうという処分権主義・弁論主義という考え方と事例(判例)は、毎年必ず出題されるポイントですので、民訴法の学習の際には、この点を意識されることが極めて重要です。

 

民訴法の出題傾向と得点目安

民訴法の出題傾向

さて、では、司法書士試験の民訴法の出題傾向に目を向けてみます。
司法書士試験の民訴法では5問中2問程度は、処分権主義や弁論主義に関する出題です。

 

そのため、処分権主義、弁論主義が適用される場面(訴えの提起・審理・証拠・当事者による訴えの終了等)について学習する必要があります。

 

しかし、司法書士試験では、簡易な訴訟手続として簡易裁判所における特則・支払督促・手形訴訟、小切手訴訟、起訴前和解などといった、市民サービスに近い司法手続きも出題されます。

 

弁護士が難解な事件や多額の請求となる事件を扱うのとは異なり、司法書士は市民の方が遭遇してしまったトラブルについて、争点自体は易しいものの、ご自身で手続きをするのは難しいという時に、そのサポートをするということも大きな役割となります。

 

市民と裁判所の架け橋として裁判所を使いやすくするサポートをするというのも司法書士の大きな役割の一つです。

 

そのため、民訴法の基本原理の理解と応用を問う司法試験などと比べると、やや細かい知識が問われる傾向にあります。

 

民訴法の得点目安

民訴法は、範囲が広い上に細かい知識も問われますので、多少の失点もやむを得ない面があります。

 

そのため、一般的には5問中4問程度が一般的な合格者の得点目安です。ただし、過去問で問われた問題が出題の中心となる年は満点が続出します。

 

一方で、過去で問われたことがない問題(平成30年など・再審制度で1問全部出題されるのは司法書士試験上初めてでした)が出題の中心となる年は3問程度の正解でも巻き返すことが可能です。

 

民訴法は出題される問題がどの分野から出題されるかで特典目安が変わってきますが、一般的には4問程度を目指されるとよいでしょう。

 

少なくとも過去問をマスターしておくことは必須です。

 

 

その他勉強のコツ:要件事実論を簡単に見ておくこと

要件事実論とは、民事訴訟で権利の発生などのために主張しなければならない必要最低限の事実を学ぶものです。

 

例えば、「AがBに冷蔵庫を平成30年9月2日に12万円で売ったので、代金を請求したい」という事例であれば、「Aは、平成30年9月2日、冷蔵庫を120万円で売った」ということが必要な事実になります。

 

冷蔵庫を売ることになった経緯や売買の交渉の流れなどは基本的には主張する必要はありません。

 

例えば、冷蔵庫は〇〇というメーカーから特別に卸してもらったものだ、とか、「今なら特売ですよ」と言って2度目の来店で購入することになった、などは、必要最小限の事実ではなく、主張不要です

 

この要件事実論は、弁護士を目指す方は、司法試験予備試験での出題があり、法科大学院(ロースクール)で必ず学習をします。

 

一方で司法書士としては、合格後の簡易裁判所における代理権の研修(特別研修)で必須学ぶこととなります。

 

要件事実論は、司法書士試験では、合格後に特別研修で学ぶことが前提とはなっていますが、民訴法を理解する上で(特に出題のメインとなる、「訴訟の審理」の場面で)一通り理解しておくと大変理解が進みます。

 

記憶する必要は一切ありませんが、要件事実に関する基本的な本を一読されることも、時間があるうちにできれば是非おすすめします。