民法の勉強法とコツ(全般)

司法書士試験対策・民法の勉強法とコツ(全般)

司法書士試験において、民法は間違いなく最重要科目となります。

 

本記事では2記事に分けて、これから司法書士試験にチャレンジされる方・司法書士試験の勉強を始められたばかりの方に向けて、司法書士試験の最重要科目である民法の出題傾向や学習方法、本試験における頻出のポイント(論点)などをご説明させていただきたいと思います。

 

初期の学習方針としてご参考いただければ嬉しい限りです。

 

 

司法書士試験における民法の出題傾向

前提:民法は4分野ある~学習分野の全体像

司法書士試験における民法の出題傾向をご紹介する前提として、民法の学習分野を確認しておきましょう。民法自体は大きく4分野にわかれています。

 

つまり、民法は一般的に(1)総則(2)物権(3)債権(4)親族・相続という4つの分野に分けることができます。条文でいうと以下のようなになり、たいへんボリュームの多い法律です。

 

(1)総則 第1条から第174条まで
(2)物権 第175条から第398条の22まで
(3)債権 第399条から第724条まで
(4)親族・相続 第725条から第1044条まで

 

 

この(1)総則(2)物権(3)債権は、社会生活における財産関係の法律的なルールを決めているものであるので(例えば売買の際のルールなど)(1)から(3)までをまとめて財産法と呼びます。

 

一方で(4)の親族・相続は、家族間の法律的なルールを決めているものであるので(例えば、相続の手続きなど)家族法と呼びます。

 

民法で学習する分野の全体像を図でまとめますと以下のようになります。

 

 

(参考・民法の全体像)
民法の勉強法とコツ(全般)

 

さらに細かくに分けることも可能です。例えば、(2)の物権を(ⅰ)物権総論と(ⅱ)担保物権と分けたり、(3)の債権を(ⅰ)債権総論と(ⅱ)債権各論と分けることなども可能です。ただ、あまり細かく考えすぎず、まずは4分野に分けて把握されれば十分です。)

 

 

民法は学習範囲が極めて膨大ですので、どこを学ばれているのかわからなくなってしまわれないよう、常にどの分野を学ばれているのかを意識されることが効果的な学習のためにはとても重要となります。

 

司法書士試験における民法の出題傾向

さて、それでは司法書士試験における民法の実際の出題傾向です。上述しました4分野からまんべんなく出題がなされますが、物権分野が他の分野の約2倍の出題数となっています。

 

具体的には

  • 総則―3問
  • 物権―9問
  • 債権―4問
  • 親族相続―4問

というのが例年の出題傾向です。設問内容は、条文と判例の知識を問うものです。

 

かつては学説を問う問題が出題されていた時代もありましたが、現在はほとんど出題されません。

 

ただ、司法書士試験の民法が他の国家試験などと違っている大きな特徴として、極めて細かい条文の知識を問う問題も相当数出題されるという点が挙げられます。

 

例えば、司法試験などでは出題されないような細かい手続きに関する条文なども出題されます。(一例として平成30年の第23問などが挙げられます)

 

司法書士試験では条文を非常に正確に読み、記憶しているかどうかという点が最終的な合否ラインとなると、極めて熾烈な争いとなります。

 

基準点ラインとなると、択一1問の点差で数百位の順位が異なってきます

 

したがって、司法書士試験の民法の勉強は、普段から条文を理解・記憶するという姿勢が合格のカギを握ります。

 

 

民法の得点目安

民法は、20問中、18~19問程度が合格に必要となる得点目安です。司法書士試験において、民法は「正解して当たり前」というのが合格ラインの受験生の一般的な感覚なのです。

 

民法は司法書士業務のすべての基礎となると言っても過言ではありません。実務の基礎という意味でも、試験合格という意味でも、民法は高得点を得るようにする必要があります。

 

例えば、相続業務などでは民法の知識は極めて重要となります

 

民法全般の勉強の仕方・コツ

では、この重要な民法をどのように学んでいくかという学習の進め方・コツですが、ここでは民法全般についての学習の進め方・コツを述べさせていただきたいと思います。

 

財産法特有の勉強の仕方や頻出論点、家族法特有の勉強の仕方や頻出論点など、いわば「各論」は次回の記事(民法の勉強法とコツ2)でまとめていきたいと思います。

 

学習初期

民法学習の初期においては、「最後まで一度学習し終えること」が極めて重要です。

 

ご存知の方も多いかと存じますが、民法は「パンデクテン」と言われる法律の作られ方をしていて、共通して問題となるテーマを前は前に押し出して、個別的なテーマを後ろで検討するという条文の構造になっています。

 

一例を挙げれば、「時効」というテーマは物権でも債権でも問題となるため、総則の分野で学習します。

 

しかし、時効が具体的に問題となることが多い債権のことは、債権分野まで学習が進まなければわかりません。

 

つまり、時効という総則のテーマを理解するためには後半の債権まで勉強しなければ、しっかりとは把握できないという構造になっています。

 

多くの予備校や人気のあるテキストなどでは、このパンデクテン方式の理解のしにくさを可能な限り解消するため、それぞれ工夫がされています。

 

しかし、やはり一度は最後まで学習を終えなければ民法を理解することは困難です。

 

そのため、多少わからないところ、理解しにくいところが生じても、それは「当然のこと」と捉えられた上で、ドンドン先に進まれて一通り全体を学習することが初期の学習ではとても大切です。

 

おおむね3ヶ月から半年程度を目安として、予備校や市販のテキストなどを利用し、一気に全体を学習することをおすすめします。

 

 

中盤

一通り民法の全体を学習した後は、問題演習をされることが効率的です。

 

予備校の授業を聞いたり、テキストを読んでいるだけでは抽象的で理解しにくいポイントが具体的な問題を解かれることで理解することができるようになります。

 

また、問題演習を繰り返して何度も間違ってしまうところを弱点として発見することもできます。

 

演習の素材としては、過去問を外すことはできません。独学ではポイントを見抜くことが難しいという場合には予備校の択一対策講座を利用されるという方法もあります。

 

 

仕上げ段階

過去問を何度も繰り返して、予備校主催の模試などで高得点が取れるようになってきたら、学習の仕上げとしては条文をしっかりと読むということが最後の仕上げです。

 

膨大な試験範囲からまんべんなく出題される民法ですが、それでも、仕上げの段階となれば、特に重要となる条文や判例の目星がつくようになってきます(逆に言えばこのような段階が民法で18問~19問程度取れるレベルということになります)。

 

最終段階は他の科目の学習と並行しつつ、民法で試験によく出ている条文を3時間程度で1周読み込める程度が仕上げの段階ということができます。

 

民法の注意点

民法は、しばらく勉強をしないままでいると実力が落ちやすい科目です。民法には科目独特の思考方法があり、離れているとその思考方法が抜け落ちてしまうのです。

 

大学受験までで例えるならば数学に近いかもしれません。しばらく数学を離れていると、いざ問題を解こうと思っても、なかなか手が動かないという感覚に近い面があります。

 

そのため、民法は他の科目の学習が忙しくなってきてからも、時折、1時間程度でもよいので、民法の問題を解いて民法の思考回路が衰えていないかをチェックすることが実力を落とさないための学習のコツです。